鈴木保奈美「ママ・奥さんカテゴリーはやめよう」 疑問に思わなかった若い頃を経て今感じること
──ウィリーもリンダもその息子たちも、輝かしい理想と厳しい現実の間で折り合いがつかずに苦悩しているように見えます。理想を持たないと前に進めないけれど、持ちすぎても現実は理想どおりにいくとは限らない。保奈美さんご自身は、人生の理想と現実みたいなものを感じることはありますか。もしあるなら、それとどう向き合おうと思っていますか?
鈴木:私自身は、理想と現実という考え方を、あまりしたことがない気がします。理想が上のほうにあって、自分はまだここで、乖離してるみたいな感覚は、あまりないというか……。私のイメージする理想って、もっと現実離れしたもので、本当に夢のような、ありえない形っていうのかな。例えば、私はいつも、歌がうまく歌えたらいいなと思っているんです。JUJUさんとか、絢香さんとか、いきものがかりぐらいに歌えて(笑)、ばんばんミュージカルとかに出られたらいいなぁっていう。
でもそれは夢みたいなことですし、そうじゃない現実の自分と折り合いがつかないからどうしようっていう話ではないですよね。なので、そういう意味では「こうなりたい」みたいな夢を、実はあまり見てないのかもしれません。
妻や母という役割
──なるほど。では、作品におけるリンダの役割みたいなものは、どう感じていますか。
鈴木:今、思い浮かぶことは2つあって。1つは、私は子どもがいることもあって、リンダと息子2人との、母と子の関係が面白いなと思っていて。そこをどう膨らますかによって、彼女の役割も見えてくるだろうなと思っているんです。そして同時に、リンダは一見、男たちが暴走するのを一生懸命調整しようとしているように見えますが、本当のところはどうなのかなと。妻や母という役割じゃない“リンダ自身”を見つけたいなと今は思っています。