過激なネット炎上は「設計」でもっと解決できる オードリー・タンの「コミュニケーション術」
私は、いつも自分が間違っているかもしれないという感覚を持ちながら話を聞いています。
とはいえほとんどが初対面の相手ですから、先入観を抱きやすい状況です。自分が疲れているために「相手も疲れているだろう」と思い込んだり、相手が楽しそうに見えるから「この人は楽しいんだ」と錯覚するようなことが起こりやすいんですね。だから私は完全に自分を手放します。発言はせずにひたすら傾聴し、相手の視点を取り込むことに集中します。
そして、最後の10分で私は質問を投げかけます。
「具体的にどのようなことをすればよいか?」とか、「他の人がそれについてどのような協力ができるのか?」といったことです。
それは私自身の参考にするだけでなく、私の質問で補うことによって、このパズルのピースが他のピースと合わさることができるようにするためです。
私のオープンオフィスの模様は議事録や動画でインターネット上に公開されますから、私もその相手も面識のない第三者がそれらの記録を見た時に、その相手に直接連絡することができるようになるのです。リアルな場とインターネットを組み合わせ、私自身が1つのプラットフォームとして、さまざまな人や意見がつながることを意識しています。
ネット上のコメント欄の設計も、大切な政治の1つ
一方で、インターネットには問題点もあります。日本でよくいわれる「炎上」もそうですし、影響力のある人の意見に流されやすいという点を指摘する人もいます。それについて、私はインターネット上のコメント欄の設計も大切な政治の1つだと思っています。
大部分の人は、コメント欄があると、別の人の意見の気に入らないところを見つけて攻撃を始めます。賛成派は仲間を集めて、「いいね」を押します。反対派も、反対の意見を見つけて同じことをします。でもそれは、日本人だからではありません。台湾でも同じです。
入閣前に私が設立にかかわったプロジェクトに、誰もがオンライン上で法改正について討論できる民間のプラットフォーム〈vTaiwan〉があります。
立法院(国会に相当)で法改正の審議に入る前に、このプラットフォーム上で行政の担当者や市民、専門家といったあらゆるステークホルダーが討論し、大まかな合意に至ってから改正案の草案を作り、それを立法院に送るところまでを行うというものです。
過去にはインターネット上での酒類販売、ライドシェアサービス〈Uber〉や、民〈Airbnb〉の国内参入などについて、異なる立場の意見が飛び交い、結論が出ずにいた議論を収拾し、法改正に大きく貢献してきました。
〈vTaiwan〉では、意見に対して賛成か反対かを表明するボタンを押すと、同じ意見の人がいる場所にあなたのアイコンが位置づけられます。こうしてさまざまな意見が分類され、可視化されるのです。
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