人を理解したいなら「自分はダメ人間」と認める事 不器用で失敗が多いほど面白い会話ができる

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カメラをしっかりと固定しないまま三脚を持ち上げて、危うくカメラを落としそうになったこともありました。フィルムチェンジが下手で撮影途中で絡まったり、カメラのバッテリーやコードを忘れてきたり、撮影中カメラに不用意にぶつかったり……。

われながらそこまでかと呆れるほどの失敗続きで、怒鳴られてばかりでした。結局こいつは使い物にならんと、50日ほどで撮影現場から外されました。社に戻って上司に「何をしたらいいでしょう?」と聞くと、「いまのところ仕事はないよ」と返されました。それが私の若い頃の姿なんですね。でも、お陰で失敗談には事欠きません。いくらでもすることができます。

会話していて、一番つまらない話は?

会話していて、一番つまらない話は何だと思いますか? それは自慢話です。自慢話ほど聞かされていて苦痛なものはありません。ところが失敗談は面白い。それを半分笑い話にして語れる人は、とても魅力的です。だから、不器用で失敗の多い人は、それだけ面白い会話ができるネタを持っているということです。

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お笑い芸人の人たちなどは、プライベートで何かトラブルが起き、失敗すると、これはネタになるぞと内心喜ぶそうです。一般の私たちも同じでしょう。自分を賢く見せようとするより、ダメなところ、バカなところをさらけ出すことで、会話も盛り上がるし、相手も心を許してくれる。本音で語ってくれるようになると思うのです。

自分を高いところに置こうとするのではなく、低いところに置く。頭を低くして相手と向き合う。それは決して卑屈になるということではありません。ダメな自分、弱い自分を飾らずごまかさずに受け入れている。その潔さとおおらかさがむしろ信頼感を生むのです。

コミュニケーションの細かいテクニックを身につける前に、この基本姿勢を身につけるべきだと思います。

田原 総一朗 ジャーナリスト

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たはら そういちろう / Soichiro tahara

1934年滋賀県に生まれる。1960年早稲田大学を卒業後、岩波映画製作所に入社。1964年東京12チャンネル(現・テレビ東京)に開局とともに入社。1977年フリーに転身。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年戦後の放送ジャーナリスト一人を選ぶ城戸又一賞を受賞。

著書に『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』(白秋社)『戦後日本政治の総括』(岩波書店)『創価学会』(毎日新聞出版)『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)などがある。

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