人を理解したいなら「自分はダメ人間」と認める事 不器用で失敗が多いほど面白い会話ができる
とはいえ、この2人は特別でしょう。ですが、世間一般と比べても、私は弱い部類だと思っています。もっと言えば、自分に自信がない。娘に言わせると、私が時折討論などで相手に噛みつくのは、弱いからだそうです。
相手に否定されたと感じると、ついムキになるのはそのためだと言うんですね。若い頃ならそんなことは認めなかったかもしれませんが、最近は娘の言うとおりだなと感じるようになりました。
60歳のとき、体の調子がおかしくなって入院したことがありました。「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」も2回ほど休んだと思います。前から弱かったのですが、すっかり胃腸が働かなくなり、ガンを疑いました。
病室では死ぬことばかり考えてしまう
結局、仕事のストレスが原因で、自律神経失調症という診断でした。眠れずに病室にいると、死ぬことばかりを考えてしまいます。夢遊病者のように病棟を歩き回りましたが、首を吊れるような場所もありません。屋上に上がってみたけれど、金網が隙間なく張り巡らされていて飛び降りることもできず、仕方なく病室のベッドに戻る。そんなことを繰り返しました。
それでもそのとき、妻の節子がいてくれたおかげで立ち直ることができました。
ところが彼女が2004年、乳がんで逝ってしまった後は、心に大きな穴が開いたようで、しばらくは本当に死ぬことばかり考えていました。彼女の親友でNHKのアナウンサーをやっていた下重暁子さんとの対談で、そのことを話したら、「奥さんのところに行きたいと思ったからですか?」と聞かれました。
私は残念ながら死後の世界があるとは考えない人間なので、「それはないです。ただ、1人で生きていく自信がないからです」と答えました。どうやって立ち直ったのかと聞かれましたが、それは仕事があったからなんですね。
世の中でまだ自分が多少なりとも必要とされ、働くことができる場所がある──それが救いになりました。娘がいてくれたことも大きかった。なんにせよ、私は自分の弱さが身にしみています。どんなに大きなことを言っても、弱くて自信のない自分がいるんですね。
でも、自分の「弱さを知る」ということが、実は大事じゃないかと思うのです。自分が弱い人間であること、ダメな人間であることを認めることで、虚心坦懐になれる。いろんな人を理解することができる。もっといえば、いろんな人間を受け入れることができるのです。それはジャーナリストとして必要不可欠な要素であると同時に、人として豊かなコミュニケーションを成立させるうえでも、必要なことだと思います。
そもそも、私自身の経歴を見れば、決して出来のいい人間じゃないことは確かです。就職活動でことごとく不採用になり、ようやく岩波映画という会社に採用されました。ところが、入社50日にして私は早くもダメ社員のレッテルを貼られてしまいます。とにかく不器用でドン臭いのです。
最初に撮影助手として、撮影現場の諸々の雑用を任されたわけですが、何一つまともにできませんでした。
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