韓国大統領選で候補者の夫人が注目される理由 選挙戦からスキャンダルの暴露合戦がなぜ続く?
一方で、今回の泥沼選挙を象徴するのが、尹候補追い落としのために与党陣営が飛びついた尹候補夫人の会話の暴露だ。夫人が知人と交わした延べ7時間もの私的会話が密かに録音されていて、公共放送を自認する韓国MBCがそれを入手して特ダネとして報道したのだ。ネタ元は左派系ユーチューブ放送「ソウルの声」の記者で、協力者を装って彼女に接近し、5カ月にわたって計7時間以上のよもやま話の通話を録音。彼女の抗議、反対を押し切ってMBCに売り込み、公開された。
公共放送KBSとともにMBCは政権の影響下にあって、与党をヨイショすることで定評がある。放送倫理もどこへやら、外部のユーチューブ・メディアからの“いただきネタ”で尹候補追い落としに加担したのだ。
MBCに秘密録音を持ち込んだユーチューバー「ソウルの声」には、実は筆者も被害を受けたことがある。先年、筆者が書いた記事を「ケシカラン」と非難し、押しかけインタビューを狙って支局に無断侵入してきたのだ。筆者はたまたま居合わせなかったが、彼らが退去しないため、駆けつけた警察官によって連行されている。この侵入・連行場面などすべてをカメラで撮影し即刻、ユーチューブで流していたが、当局でも先刻承知の札付きメディアの1つだ。
格好の政権追及の対象になる大統領夫人
したがって、尹候補の夫人がこんなメディアの記者に取り込まれたことに首をかしげる向きが多い。世間知らずでワキが甘かったということだろうか。これでは大統領夫人候補としてはやはり、いささかまずい。尹候補夫妻は晩婚で10歳以上の年齢差がある。子どもはなく、夫人はアート系のイベント企画制作会社を経営している。
暴露された会話内容には、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾・追放は保守派に責任があるとか、韓国の「女性人権MeToo運動」は、保守派がお金でちゃんと処理しないから広がったとか、私が大統領官邸に入ったら左翼メディアは許さないといった言いたい放題の内容もあったが、与党陣営が期待したほどには打撃は広がらなかった。金健希夫人のざっくばらんさが逆に人気を呼んだりもした。
しかしこうした双方の夫人疑惑は、どちらが当選しても引き続き相手陣営による格好の政権追及ネタとして残る。事後の敗者による報復と嫌がらせは確実というわけだ。韓国メディアは早くも「次期政権では大統領夫人が法廷へ?」などといった予測を面白おかしく報じている。
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