政治圧力をかわすことが目的化した政策の危うさ【日銀が追加緩和決定(2)】
今回の日本銀行の追加緩和は市場に対して政策の先き取り感、サプライズを打ち出すことには成功したようである。しかし、政治的背景からずるずると追い込まれた感が強く、副作用も懸念される。
今回、日本銀行は、(1)金利誘導目標の変更、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0~0.1%程度で推移するように促す、(2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の強化、(3)1年後に5兆円をメドとする資産買い入れ基金の創設を発表した。
買い入れ資産は長期国債および国庫短期証券で計3.5兆円程度、CP(コマーシャルペーパー)、ABCP(資産担保証券)および社債で1兆円程度、残りをETF、J−REIT(不動産投資信託)にする方向で検討するとしている。
買い入れ条件・方法は長めの市場金利低下と各種リスクプレミアムの縮小を促す観点から、今後、検討するとし、買い入れる長期国債、社債は残存期間1~2年程度を対象とするとしている。
このうち、(1)に関しては、明確にゼロ金利を目標としたわけではない。準備預金への付利0.1%を外していないことからもわかる(超過準備預金への付利はそれがフロア(下限)になる効果がある)。
無担保コールレートオーバーナイト物は既に0.1%を切る現象が起きており、8月30日に既に発表している固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを10兆円追加して30兆円とすることや、時間軸の強化、資産の買い入れなどを進めれば、結果的に0.1%割れが常態化するために、これを追認し0.1%の上限を外したに過ぎない。
ただし、政治への配慮や市場の好反応を引き出す上で、報道等で「実質ゼロ金利政策」と銘打たれることは期待しているのだろう。先日の財務省の円売りドル買い介入に際して、「非不胎化効果」を否定しなかったのと同様だ。
今回の追加緩和について、バークレイズ・キャピタルの森田京平チーフエコノミストは「日銀も忸怩たるものがあるのではないか」と話す。「追加緩和は『ひもを押す』ことであり、これによりデフレを脱却することはできないとわかっているのに、政治的に追い込まれ、政府に黙ってもらうために決めたもの」としか見えないからだ。