政治圧力をかわすことが目的化した政策の危うさ【日銀が追加緩和決定(2)】

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 また、森田氏は「ETFやJ-REITが購入対象となったことはサプライズである一方、外債を対象にしなかったところに、為替市場だけは、日銀の庭に入れたくないという強い意思表示がある」と見る。
 
 日銀はこの間、追い詰められていた。
 
 デフレが長期化し、追加緩和を求める声は、一向に収まらない。足元で円高がなかなか収まらないうえに、米国は、バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長が、11月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、追加緩和を行うことを示唆している。そうすればさらなる円高が進む。民主党やみんなの党などからは日銀法改正などの声も出ている。さらに、10月28日に日銀が発表する予定の「展望リポート」では物価見通しを下方修正せざるを得ないと見られている。
 
 こうしたなかで、これまでのように、「政策が小出し」「後手に回っている」といった批判をかわそうとしたわけだ。予想される米国の緩和策に歩調を合わせる形だ。

経済学者のなかには依然として、日銀にインフレ目標の導入などを求める声もあるが、森田氏のように、市場関係者の多くは否定的だ。「ひもを押す」は、景気過熱時の引き締め策=「ひもを引っ張る」が効果を発揮するのに対して、逆のことは効かない状況を指す。

実質ゼロ金利が長期化し、日本は「流動性の罠」に陥って久しい。金融政策に物価や景気の引き上げ効果は期待できない。だからこそ、日本経済は停滞から出口が見つかっていない。
 
 須田美矢子審議委員が独りだけ、基金創設に際し長期国債を買い入れ対象とすることについて、債券バブルの恐れと財政ファイナンスと見なされる恐れの2点から、反対した。須田委員は8月30日の新型オペの拡充に際しても、反対している。

長期国債買い入れについて、白川方明総裁は「残存期間が2年以下のものに限定する」とし、「銀行券ルール」(長期国債の保有残高を日銀券の発行残高以下にとどめる)対象とは区分し、異なる取り扱いとするとしている。だが、政府が財政健全化を行わず、国債増発を続ければマネタイゼーション(財政赤字のファイナンス)となる危うさがある。

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