台湾有事で日本を主役にするバイデン政権の思惑 台湾への軍事侵攻に日本が抑止力として関与?

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そこでバイデン「戦略」のポイントを列挙する。

① 対中抑止が最重要課題。同盟国と友好国がともに築く「統合抑止力」を基礎に、その中核である日米同盟を強化・深化し、「クアッド」と米英豪3国の「オーカス=AUKUS」の役割を定めた
② 「台湾海峡を含めアメリカと同盟国への軍事侵攻を抑止する」と明記し、軍事的な対中抑止の前面に台湾問題を据えた。
③ アメリカ軍と自衛隊との相互運用性を高め「先進的な戦闘能力を開発・配備する」と明記。台湾有事を想定した日米共同作戦計画に基づき、作戦の共有や装備の配備、最新技術の共同研究などを念頭に置いている。
④ 2022年の早い時期に「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を立ち上げる。貿易・ハイテクを巡るルール作りで主導権確保を目指し、デジタル経済では、自由な越境データ流通の規則を定め、中国に依存しないサプライチェーン(供給網)で協力を模索。IPEFに台湾が参加するかがポイントになる。

 

「戦略」は冒頭「最も近い同盟国やパートナーと一緒に、地域自体を強化する場合にのみ、アメリカの利益を前進させられる」と書いて、アメリカ単独では中国と対抗できないとの認識を露わにした。そのために同盟・友好国との再編強化がカギと見るのである。

日米同盟をはじめ「クアッド」「オーカス」がその具体例だ。サリバン大統領補佐官などは「これは中国政策ではない」と強弁するが、「戦略」は中国認識に満ちている。その例を挙げると、「中国はインド太平洋地域における勢力圏を追求し、世界で最も影響力のある勢力を目指す中で経済、外交、軍事、技術力を組み合わせている」「中国の強要と侵略は、世界中に広がっているが、それはインド太平洋で最も深刻。オーストラリアに対する経済的強要から、インドとの(国境地帯の)紛争、台湾への圧力、東シナ海と南シナ海の近隣諸国へのいじめまで、地域の同盟国やパートナーは、中国の有害な行動のコストの多くを負担している」などだ。

対中抑止で「曖昧戦略」の放棄を臭わせる

一方、台湾問題で「戦略」は、「アメリカは自国や同盟国、パートナーと台湾海峡を含めた(中国の)軍事侵攻を抑止し、新しい能力、作戦の概念、軍事活動、防衛産業イニシアチブを開発することによって、地域の安全保障を促進する」と明記し、対中抑止の核心に台湾問題を据えた。

トランプ「戦略報告」は「中国と対抗するうえで台湾の軍事力強化とその役割を重視」と書いているものの、その具体策には触れていなかった。「台湾への軍事侵攻の抑止」とは、「中国の軍事力行使への対応を明らかにしない」曖昧戦略の放棄とは言えないまでも、曖昧戦略の放棄を「臭わせる」ギリギリの表現と言っていい。

「曖昧戦略」については、アメリカの識者が一昨年以来、その放棄を主張して注目された。しかしバイデン政権のカート・キャンベル「インド太平洋調整官」は2021年「対中政策に変化はない」と戦略の放棄を否定した。だがバイデン自身はその後も、記者会見で「台湾を防衛する」などと述べ、曖昧戦略の否定とも受け取れる発言を繰り返す。「確信犯的な失言」という観測すら出ている。

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