台湾有事で日本を主役にするバイデン政権の思惑 台湾への軍事侵攻に日本が抑止力として関与?

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「戦略」はさらに、「台湾海峡の平和と安定を維持するため、地域内外のパートナーと協力し、台湾の自衛力を支援することを通じ、台湾の人々の願いと最善の利益に沿って、台湾の将来が平和的に決定される環境を確実にする」と書き、台湾軍事力の強化を「内外のパートナーと協力」して支援するとした。日本が含まれるのは明らかである。

さらに「戦略」は、日本、オーストラリアなど同盟国と構築する「統合抑止力」を強調し日米同盟の深化を求めている。日米両国は2021年4月の菅義偉・バイデン首脳会談の共同声明で「台湾の平和と安定の重要性」を約半世紀ぶりに盛り込み、日米安保を「地域の安定装置」から「対中同盟」へと変質させた。

そして2022年1月7日の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、台湾有事の初期段階に、アメリカ海兵隊が自衛隊とともに南西諸島を「機動基地」化し、中国艦船の航行を阻止する「共同作戦計画」にゴーサインを出した。台湾問題で従来は「及び腰」だった日本を、「主役」にしようとする内容である。安倍氏の「台湾有事は日本有事」「日本がフロントになった」などの発言がそれを裏付ける。

日米台の防衛協力に進むか

「戦略」は「統合抑止力」について、具体的に次のように書く。「アメリカは同盟国やパートナーと協力して相互運用性を深め、高度な戦闘能力を開発し展開する」「われわれは新しい作戦概念を開発し、より弾力性のある指揮統制を構築し、共同演習と作戦の範囲と複雑さを高め、同盟国やパートナーと共に前進し、より柔軟に活動する能力を強化する」。

これらの表現が、「日米共同作戦計画」に基づき、作戦共有や装備の配備、最新技術の共同研究などを念頭に置いたものであるのは疑いない。「戦略」はさらに防衛産業の統合にも触れる。「われわれは防衛産業基盤を結びつける新たな機会を見いだし、防衛サプライチェーンを統合し、集団的軍事的優位性を支える重要な技術を共同生産するなど、同盟国とパートナー間の安全保障関係を促進する」と書いている。この中には日本はもちろん、台湾防衛産業も含まれる可能性がある。

バイデンはこの春、東京で開かれるクワッド首脳会議出席のため来日し、それまでに「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の概要を明らかにするはずだ。そこには「防衛産業の統合」の、より詳細な内容が明らかにされるかもしれない。

日米同盟の深化が、「日米台」防衛協力の強化にも及ぶとすれば、「インド太平洋戦略」が中国敵視の性格をいっそう帯びるのは避けられない。「台湾防衛」をめぐる日米協力はまるで「底が抜けた」かように進んでいる。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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