対中政策で「安倍晋三路線」を走る岸田文雄内閣 日米首脳会談で見せたタカ派の素顔
制服組が「最悪のシナリオを想定して作戦を練るのは当然」という見方もある。一理あるにせよ、戦闘状態を前提にした戦争シナリオの「起動」は、「外交敗北」を意味する。勝者なき戦争に発展する前に、対話と相互理解を重ね戦争を回避するのが、外交の役割だからである。
中国は台湾統一を「歴史的任務」に設定しているが、統一を急いでいない。少子高齢化の加速で成長に陰りが見える現在、プライオリティは「体制維持」にあり、台湾武力統一はそれを危険に曝す恐れがある。日米制服組が有事切迫を煽る目的は、①台湾問題で「脇役」だった日本を米軍と一体化させ「主役」にする、②南西諸島のミサイル要塞化を加速し、米軍の中距離ミサイル配備の地ならし、③中国が容認できない一線を意味する「レッドライン」を引き出すこと、にあるとみてきた。
勝敗の決着つかない迷路に
「聞く耳を持つ」を信条にする岸田氏は、「ハト派」らしい温厚な印象を周りに与える。しかし日米首脳会談と「2プラス2」の結論を見ると、台湾有事を最優先課題に、日米同盟を中国包囲装置にしようとする安倍路線への「前のめり」姿勢が鮮明だ。
台頭する中国を叩くためアメリカが仕掛けた米中戦略対立は、バイデン氏が「民主vs専制」の競争と位置付けたことによって、「勝敗」の決着がつかない迷路にはまった。今年に入り、台湾情勢が比較的落ち着きを取り戻しているように見えるのは、バイデン政権がウクライナ情勢に手足を取られ、台湾での「挑発」が減ったのが一因だ。
フランスを代表する歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は、バイデン政権が「オーストラリアとの原子力潜水艦の契約や北京冬季五輪の外交ボイコットを通して、中国との経済的な対立を軍事や外交の領域まで広げている。現在の世界に不確実性を作り出しているのは中国ではなく、アメリカのほうだ」(日本経済新聞2022年1月24日付け)とみる。
そのうえで、米中対立構造から「世界が再構成されること自体が脅威」として「新たな冷戦という幻想に巻き込まれてはいけない」と主張する。岸田氏もまたアメリカの「優等生」として、米中対立構造から「世界を再構成」する迷路に差し掛かっている。
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