190㎝"小柄"なNBA選手が「歴代最高」になった訳 ノイズを無視して重要なことに集中するには?

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たとえば、片手でテニスボールをひとつ宙に投げてキャッチしながら、もう片方の手でバスケットボールをドリブルする。次にテニスボールをドリブルする。それからバスケットボールをドリブルしつつ、テニスボールを壁に投げつけてキャッチする。さらにバスケットボールを両脚のあいだに通しながら(レッグスルー)ドリブルする。そして最後には片手のテニスボールを2つに増やしてジャグリングする。

これらを段階的に練習することで、複数の情報を同時に処理しながら、タスクに集中する能力が高められる。

「カリーの小柄な外見からは、彼がNBAの圧倒的な実力者だとは想像できないだろう」とジャーナリストのドレイク・ベアは言う。

「レブロンのようにパワフルでもなければ、マイケル・ジョーダンのように空中を飛ぶわけでもない。彼の実力はもっと見えにくいところにある。すばやさやシュートスキルが優れているのはもちろんだが、それよりもずば抜けているのが、感覚処理能力の高さだ。どんなに複雑でストレスフルな状況でも、彼の目は鋭敏さを失わない。相手チームのポジショニングから最適な動線を割り出し、チームの得点につなげる。試合の状況を誰よりも正確に把握しているのだ」

所属チームのコーチを務めるスティーブ・カーは、カリーの目のよさと反射神経を「これまでに見た誰よりも優れている」と評価する。いまやカリーは、NBA史上最高のシューターとして知られる存在だ。

誰でも「情報処理速度」は上げられる

近年の研究は、注意力を鍛えると情報処理速度が格段に上がることを実証している。

ある実験では、コンピューター・シミュレーションで8個のボールが壁に反射して行き来する映像を表示し、そのうち4つの動きを目で追うように被験者に指示した。その結果、プロのアスリートは一般の人よりも複雑で速い動きを把握することができた。

アスリートが優れているのは当然かもしれない。だがここで注目したいのは、アスリートでない人も含めて、すべてのグループが練習によって飛躍的に成績を上げたという結果だ。

つまり、練習すれば誰でも、ノイズを無視して重要なことにフォーカスする力を身につけられるのだ。

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