安倍政権を再検証「画期的だった若者重視」の裏側 小泉純一郎は浮動層の人気をつかむ目標を達成
安倍政権の若者重視戦略は、政権運営を日々続ける中で、重視されるようになっていったものであろう。自民党では独自の世論調査を頻繁に行い、データを綿密に分析していた。また、報道機関等による調査結果も当然、十分に検討したであろう。
その中で、若者の政権支持が高めで推移していることに気づき、注視するようになったという。若年層からの人気は、安倍自身、街頭演説等での体験から実感するところでもあった。
経済的な利害をまずはアピール
若年層に対し、具体的に何をアピールするかという点であるが、これはまずもって経済的な利害に関することであった。
世耕の言葉を借りれば、「経済がうまくいってることを実感もしてもらいながらアピールしていく」「政権かえちゃったり、政権が弱体化したらうまくいかなくなりますよというメッセージを伝えていく」ということである。安倍によれば、若年層はとくに「経済の状況に敏感」で(後述のように、おそらくこの認識は正しい)、こうしたアピールが有効と考えられた。
アベノミクスの成果の中でも、とくに若者就職率の改善は、若年層にとってダイレクトに響く実績であり、政権は意識的にアピールするようになった。このことは、安倍自身インタビューの中で強調した点で、実際、国政選挙の政権公約集(マニフェスト)の内容にもよく表れている。
公約集の中で、若者の就職率改善について具体的数値を示し、大々的にアピールすることを始めたのは、2014年衆院選からである。その後も、この点のアピールは続いたが、とくに2019年参院選では、安倍政権の実績としてトップに掲げられるまでに扱いが大きくなっている。
子育て支援・教育無償化といった政策も、比較的若い世代の利益にかかわるが、こうした社会政策も政権後期にはアピールに加わってくる。2017年衆院選の選挙公約集では、「北朝鮮への対応」「アベノミクスの加速」「国民所得の増加」「保育・教育の無償化」「地方創生」「憲法改正」が(この順序で)取り上げられており、若年世代向け政策は大きな柱となっている。
(文/境家史郎、東京大学大学院教授)
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