岸田政権を急襲「不祥事3連発」に潜む不穏な蠢き 「自民党内の政治的謀略のにおいがする」との声も

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そもそも、藤井氏のスキャンダル発覚は「官邸チームの危機管理の大失敗」(自民幹部)でもある。経済産業省での藤井氏の5期先輩で、官邸チームの中軸となる嶋田隆首席政務秘書官は、想定外の事態の情報収集と善後策に苦闘していたとされる。

一方、自民京都府連の買収疑惑は明らかに内部告発がきっかけだ。同府連内部の複雑な人間関係のもつれが、秘密漏出につながったとみられ、府連内部での犯人捜しが続いているとされる。

しかも、公認候補の府連への現金寄付とこれを受けた地方議員への現金配布の手法が長期間にわたって常習化していたことも判明。その中には谷垣禎一元総裁、伊吹文明元衆院議長ら超大物の名前も挙がっている。 

結末が予測不能な「闇試合」の様相に

ただ、いずれの疑惑も岸田政権への打撃は深刻だが、一方で自民党内の反応は極めて複雑かつ微妙だ。もちろん、党幹部の間では「いずれの疑惑も自民党への不信感を高め、参院選に向け野党を利する内容」(自民長老)と懸念する声が相次ぐ。

その一方で、反岸田派と目される有力議員からは「参院選に向け、首相をレームダックに追い込むチャンス」との不穏な声ももれてくるからだ。

ここにきて、オミクロン対応のつたなさで内閣支持率は低下傾向が目立つ。岸田首相は汚名返上を狙って、オミクロン対策について2月17日に年明け以来の官邸記者会見を開く方針だ。ただ、記者団から今回の疑惑を追及されるリスクも抱えている。

今後の展開はなお不透明だが、今回の文春砲のもたらした3疑惑が、岸田首相の“頭痛の種”となるのは間違いない。このため、自民党内では「政治的謀略のにおいがぷんぷんするが、誰も結末を予測できない闇試合の遭遇戦になる」(閣僚経験者)との見方が広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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