46歳社長がキーエンス→ホスト→起業で得た成功 「プロテイン」大ヒットの裏にさまざまな仕掛け

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【①高コスパ】。業界随一の知名度を誇る“プロテインの絶対王者”「ザバス」(明治)は、大谷翔平選手など大物をCMに起用し、スポーツ店などの店頭にずらりと並べることで認知度を高めている。D2Cブランドが太刀打ちしようとすると、広告予算を捻出するために商品の原価率を下げがちだ。すると「商品の原価率が20%程度に抑えられ、価格が上がってしまう」(只石さん)という。

「VALX」の戦術は違う。展開当初の広告費はほぼゼロ。店頭に商品をまったく置かず、Amazonや楽天、自社HPからの販売のみだ。その代わり原価率は50%程度にし、質の高いものを安価で販売できている。しかし、「そもそも認知されなければ売れない」という新興ブランドの課題はある。それを解決したのが、“筋肉博士”とのコラボレーションだ。

もともとは顧客が求めるパーソナルトレーナーとのマッチングを行う「パーソナルトレーニングジムの総合情報サイト」で成果を上げた只石さん。プロのトレーナーから「安くていいプロテインがない」という悩みを聞いたことで、開発・販売に乗り出した。そこでタッグを組んだのが“筋肉博士”こと、山本義徳さん。K-1選手や大リーグのダルビッシュ有投手などの指導をしてきた、日本有数のトレーナーだ。

プロテインは「美味しくなければ続かない」

山本さんは、自身も強く求めていた「高品質プロテイン」をレバレッジでプロデュースし、さらには普及にも一役買っている。レバレッジと協力してほぼ每日アップしているYouTubeチャンネル「山本義徳 筋トレ大学」で、効果的な筋トレ方法とともにVALXプロテインを紹介することにより、認知度は一気に上がっていった。

チャンネル登録者数は53万人(2月15日時点)を超え、山本さんも「YouTubeを通じて多くの人に正しいトレーニング方法を伝えることにやりがいを感じている」と、相乗効果を実感している。

ダルビッシュ有投手なども指導した日本有数のトレーナー・山本義徳さん(奥)。愛称は“筋肉博士”。YouTubeチャンネル「山本義徳 筋肉大学」は登録者53万人を超えている(筆者撮影)

“筋肉博士”とのタッグにより【②玄人ファン】に刺さった。高品質で安価なプロテインは、親交があったトレーナーの口コミでどんどん広がっていき、現在は愛用を公言する芸能人も出てきた。最初から一般向けでは「ザバス」など大手には勝てない。“筋トレ玄人”の信頼を勝ち取り、シャンパンタワーのように一般にも広げていく戦略が成功した。

【③飲みやすさ】も継続購入の大事な要素だ。記者は学生時代からスポーツをしており、プロテイン歴も長い。VALXプロテインを飲んでみて「水にすぐに溶けて、味も美味しい」と感じた。只石さんも「美味しくなければ続かない」と、味にはこだわりを見せる。味はバナナやチョコレート、抹茶などの定番はもちろん、コーンポタージュ(数量限定)や杏仁豆腐などの変わり種も販売されている。

「コーンポタージュ風味」。ホットで飲めるプロテインとして期間限定で販売し、現在は品薄に(写真左)。「杏仁豆腐風味」のプロテイン。そのまま飲んでも美味しいが、固めてデザートのように食べることができる(写真右)(写真:レバレッジ)

「VALX」を手がけるレバレッジは、3年連続増収の2桁成長、2021年3月期は前年比成長率362%と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。しかし経営者の只石さんは「まだまだ認知度か低い」と兜の緒を締める。油断と慢心こそ命取りになると、自身の経験から知っているからだ。

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