オードリー・タンが本の文脈を即理解できる秘訣 他人との対話もすべて「読む」素材である

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ページを読むときは、すべての行の文字が見えます。1文字1文字読むわけではなく、視線がつねにスキャンし続けるような状態になっています。しかし声には出しません。ポイントはやはり、頭の中で流れを止めないことです。流れを止めてしまったら読み取った内容を覚えておくことは私にもできず、記憶に残るのは私が流れを止めてしまった部分だけでしょう。

この読み方を練習する場合は、最初から分厚い本は選ばず、まずはA4サイズの文章1枚くらいから始めることをお勧めします。そして読み終えたらすぐに眠って、翌朝目覚めたら前日に読んだ内容を思い出してみましょう。するといくつかのキーワードが自然に浮かんできて、頭の中で1つの構造が形成されます。人間は睡眠中に、短期記憶の中で印象深かったことや将来的に役立ちそうなものを長期記憶に書き込むからです。これが、脳が要点を仕分けるプロセスです。

キーワードやキーワード同士の関連性は記憶できる

これは感覚記憶(注2)ではないので、文字の大きさや色を覚えておくことはできませんが、キーワードやキーワード同士の関連性は記憶できます。人間は連想することによって長期記憶を書き込んでいます。つまり私がキーワードや画面、映像などを思い出したときに、文脈構造のつながりが形成されているのです。そこで、私はデジタル形式ならではの全文検索機能を多用しています。

(注2)感覚記憶
音やにおい、味、触覚、視覚といった五感を通じて人間が感じ、記憶として脳内に定着する前の一時的に保持される情報。

ですから、私が読んだ本の内容を人に説明するとしたら、全文検索機能を駆使してキーワードを追いかけ、根拠となる記述を文中から探すでしょう。私の頭の中にはすでに構造ができあがっているので、その構造に関連するデータを調べるのに時間はかかりませんし、しかもランダムアクセスが可能なので、順番に読み返さなくても読みたい部分に直接跳ぶことができます。

大切なのは、判断してはならないのではなく、判断を下すのは一区切り読み終えてからだということです。相手があなたに何かを伝えるつもりで準備を整えているのに、いざ二言三言話したところであなたが口を挟んだら、その人が本当に伝えたいことを理解できるわけがありません。「なるほど」「わかった」などと相槌を打ったところでそれはうそです。脳内補完であり、幻想です。

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