レクサス「NX」は、何が新しいのか トヨタ7年ぶりのターボ車が映す時代の変遷

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NX200tには「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」というモードを切り替えるスイッチが付いている。それぞれ試してみたが、アクセルに対するエンジンのレスポンスや加速感などがずいぶん違ってくる。

やはりターボモデルならではの加速性能を体験しなければ、今回の試乗の意味がない。「スポーツプラス」モードにして、広い道で思い切ってアクセルを開けてみた。クルマが本来持っているであろう性能や性格を知るためだ。もちろん、交通法規や安全は守ったうえでの話である。

「ターボラグ」を感じない!

ターボといえば、アクセルを踏んでからターボがかかるまでの時間(ターボラグ)を感じるのが一昔前の車だった。その代わり、ターボが機能したときのパワー感はすさまじい。いわゆる「ドッカンターボ」。記者は昔、日産自動車の「シルビア」S15型という排気量2000ccのターボモデルに1999~2001年まで乗っていたが、まさにドッカンターボのクルマだった。

一方、NX200tの加速はターボラグをほとんど感じさせない。「スポーツプラス」モードでもNAエンジンのような上品なフィーリングで加速していく。最高出力238馬力、最大トルク35.7kgf・mのパワーはさすがで、1700kgを超える車体でもスピードをぐんぐん上げられるものの、昔のターボにあったような荒々しさは薄れている。

トヨタに限らないが、日本車メーカーはかつて速く走るためのパワー競争にターボエンジンを活用した。そういったモデルはエンジンのフィーリングはスポーティであり、ユーザーもそういう志向だったがパワーを追うと燃費は悪くなる。世界的に規制が厳しくなり、環境性能が重視されていく中で対応しきれなくなり、次々と姿を消していってしまった。

一方で、排気量の大きい車を手掛けるBMWなどドイツの高級車メーカーは、エンジンのダウンサイジング(小型化)を余儀なくされる中、ターボの活用を打ち出した。排気量は落としつつもターボで出力を補って、より効率的にする戦略に出たのだ。性能を落とさずに高級車に必要なパワーを保ちつつも、「エコ」を追求するやり方である。

日産自動車も今年6月、ダイムラー社製ながら高級セダン「スカイライン」にターボエンジン仕様を追加した。HV重視の戦略で来たトヨタがNXでターボエンジンを復活させたのも、ドイツを中心とする欧州高級車メーカー勢を意識してのことだろう。

ターボが果たす役割と求められる機能は「パワー」一辺倒ではなく、「エコ」の要素も加わった。記者が浦島太郎になっている間に、時代は大きく変わっていた。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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