東電と中電が包括提携、互譲精神の落とし穴 競争力の向上を図るが、懸念材料もある

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東電と中部電力の両社は合弁会社でどこまで譲り合うか。

ただ、ムーディーズの廣瀬氏は気になる点として、「合弁会社が資金調達を行う場合、親会社による信用補完を債権者から求められる可能性がある。東電の信用力水準が低いままだと、中電だけ信用補完による潜在的偶発債務が増えかねない」と指摘する。また、東電は福島事故後、実質国有化されている。中電の水野社長は「あくまで民間企業の提携だ」と強調するが、新会社の経営に国が介入する懸念は付きまとう。

提携交渉から下りた東京ガスの関係者は漏らす。「異なる調達方針、調達ポートフォリオでやってきた両社が一緒になれば、柔軟・迅速な調達ができなくなるほか、長期契約の重複でリスク管理上の問題が生じる懸念もある」。

焦点は既存設備の扱い

新会社が発電した電気の受電比率など詳細の詰めはこれから。既存の火力統合の扱いも来年度以降に継続検討となった。中電は最新鋭の火力設備を保有しており、それを合弁会社に明け渡せば、自社の優位性は薄れてしまう。どこまで「互譲の精神」を守り抜けるかは不透明だ。

「総合エネルギー企業を目指す当社としても、自由化時代に1社で戦うのは難しい」(大阪ガス関係者)と言われるように、今回の合意が欧米から10年以上遅れた電力・ガス業界再編の呼び水となる可能性は十分ある。が、地域独占、総括原価方式にどっぷりつかってきた業界だけに、勢力図が大きく塗り替わるまでには、相当な試行錯誤がありそうだ。

(撮影:吉野純治)

「週刊東洋経済」2014年10月18日号(14日発売)、「核心リポート04」を転載

中村 稔 東洋経済 編集委員
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