セブン、「そごう・西武売却」に立ちはだかる障害 2月末に入札を実施し、2000億円超で売却方針

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ただ、好立地の店舗についても、「買収した後、売却しようと考えているのかもしれないが一筋縄ではいかないのではないか」と別のそごう・西武幹部は疑問を呈する。

「例えば、いちばん大きな池袋本店は、西武鉄道とJRが乗り入れる池袋駅の上に建っている。しかも、土地の6割程度を西武ホールディングスが保有しており、簡単には売却できない。また自前の土地で運営している三越伊勢丹などと違って、そごう・西武の場合、土地のほとんどが借り物で、われわれが持っているのは上の箱だけ。長年にわたってそごう・西武が苦戦してきた理由は、そうした土地の高い地代と人件費にあるといってもいい。だから、不動産としての価値もどれだけあるのかが疑問だ」(別の幹部)というのだ。

KKRなど複数のファンドが関心

事実これまでも、阪急百貨店などを傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリングにそごう・西武を売却する話が持ち上がり交渉を続けたものの、「丸ごと買うのは無理」と断られ、結果、関西の2店を売却するにとどまったといった話も伝わってくる。

前述したそごう・西武の幹部は、「そごう・西武ではないが、セブン&アイ傘下の不採算企業についても、売却しようと入札を実施したことが何度もあったが、いずれも話がまとまらず不調に終わっている。今回も簡単にはいかないのではないか」とみる。

投資ファンド関係者によれば、昨年、大手スーパー西友の株式65%を取得したアメリカの投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)を始め、複数の投資ファンドや事業会社が関心を示し入札に参加する構えだという。

だが、こうした障害をどのように捉え、それでも買収しようと考えるのか。セブン&アイにとって長年の懸案だったそごう・西武の処理は一歩進んだ感こそあるが、その行方には不透明感が漂っている。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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