仕事効率悪い「二度手間な人」に使える便利な一言 「オーストラリアでイノベーション特許が取れる」
料理にたとえてみると、誰かがいきなり「チャーハンはオレの発明な!」と宣言し、明日からチャーハンを作るたびに皆がそいつにお金を払わないといけなくなるみたいなことだ。そんな理不尽がまかり通っていいはずがない。
だから、特許庁は「チャーハンはもう存在するもので、あなたの発明じゃないですよ」とストップをかける必要がある。これが「新規性」である。
ところが、「イノベーション特許」はそうではなかった。なんと、事実上審査なしで取得できる。体裁が整っていればまず間違いなく取得できる、という驚異のシロモノだ。
したがって、特許として認められるべきでないようなものも乱発されるようになった。そんな滑稽な状況を、小バカにしてやろうと考えた男がいた。ジョン・キーオというオーストラリア人だ。
イグノーベル賞を受賞したユーモア
キーオは、イノベーション特許に1件の申請を出した。「環状の運搬補助装置」である。皆さんはもうおわかりだろう。つまり「車輪」だ。
普通の特許に出願したら、一瞬で蹴散らされるけれど、イノベーション特許は違う。前述のとおり、審査なしで認可されるので、書類の体裁が整っていればイノベーション特許を取得できる。キーオの申請は無事に受理され、認められた。
彼は「車輪の再発明」によって特許を取得したのである。素晴らしいユーモアというか、現代アートというか、そんな趣がある。遊び心を持ちながら制度をバカにするインテリジョークだ。
キーオのインテリジョークは大いにウケて、2001年のイグノーベル賞を受賞した。人々を笑わせるようなユーモラスな研究に対して授与される賞である。
僕は人を小バカにするプロとして、キーオの精神を見習いたいとつねに思っている。「イノベーション特許制度なんてクソだ!」と思ったとしても、普通はそれをSNSに書き込むくらいで終わりにするだろう。
だけど、彼はそうしなかった。「車輪の再発明でイノベーション特許を取ったら面白いな」と思って、ちゃんと書類をそろえて特許を取得した。
この「何かを小バカにするためにユーモアと手間暇を尽くす」という姿勢は、われわれインテリ悪口ストとしても大いに見習うべきであろう。
ということで、話をまとめよう。
「車輪の再発明」というのはエンジニアにとって「効率が悪い、避けるべき事柄」であった。だから、効率が悪い人を見たときに「車輪の再発明みたいなことしてんなぁ」と言うことができる。
だけど、僕らはひとヒネりして「オーストラリアでイノベーション特許が取れる」と言うことで、キーオの優れたインテリジョークを思い出すことができる。
ぜひ、そうやって日常的にインテリ悪口力を高めていってもらえれば幸いだ。
【使用例】
「必死で電卓を叩いて、何してるの?」
「エクセルの計算結果が合ってるかどうか、検算してるの」
「オーストラリアでイノベーション特許が取れる感じだね」
【参考文献】
Richard Smoorenburg[他]「オーストラリアイノベーション特許システムの活用法」(日本弁理士会『パテント』63巻6号、2010年4月)/北元健太「豪州イノベーション特許制度の廃止は我が国実用新案制度に何を示唆するか」(特許庁技術懇話会『特技懇』no.289 2018年5月)/三枝国際特許事務所「【オーストラリア】イノベーション特許制度廃止決定」
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