円安はいいことずくめと思う人が気づかない視点 国民生活の圧迫だけでなく企業の為にもならない

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しかし、1990年代後半から2000年代前半にかけて、国内純生産はほとんど横ばいであったため、営業余剰増加とは対照的に、賃金・報酬は減少した。

ところが、2000年代後半に円高が進んで、営業余剰が減少した。2008年から2009年にかけては、リーマンショックの影響で大きく落ち込んだ。この状態が、2012年頃まで続いた。

為替レートも1ドル=100円を超える円高になった。

2010年頃には、円高が日本経済6重苦の1つだとの声が、産業界で強まった。

当時の民主党政権は、円安への誘導を試みたのだが成功しなかった。

2013年からは、アベノミクスの異次元金融緩和で円安が進み、営業余剰が増加した。

しかし、増えたといっても、2016年の水準は、2004年頃の水準とほぼ同じだ。

以上で見たのとほぼ同じ傾向が、法人企業統計においても見られる。

なお、営業余剰の変動に伴って賃金の比率も変動するが、額が大きいため、変化はあまり大きくない。つまり労働分配率はほぼ一定だ。

円安になるとなぜ企業利益が増えるのか? 

海外での売上高を一定とすれば、円安になれば日本国内での売上高は増加する。

他方で輸入価格も同一律で上昇する。だから、貿易収支が均衡していれば、国全体としては、円安の効果は相殺されるはずである。

しかし、企業は、輸入価格上昇による原材料費の上昇を、販売価格に転嫁する。

また、国内での賃金は、為替レートにかかわらずほぼ一定だ。

このため、企業利益が増えることになる。

なお、営業余剰は、2014年以降も高水準を続けた。

しかし、2016年以降の為替レートはむしろ円高になっているので、営業余剰の増加は、原油価格の低下によると考えられる。

原油価格は2015年に急落。2017年まで、1バレル50ドル程度、2019年まで70ドル程度という低い水準だった。

これが交易条件を好転させ、国内純生産を増加させたのだ。この期間には、営業余剰だけでなく、賃金・報酬も増加した(賃金は上昇していないので、賃金・報酬の増加は、雇用者數の増加によると考えられる)。

原油価格の下落が消費者物価に十分に反映されなかったために、営業余剰が増えたのだ。

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