米国の株式市場が落ち着きを取り戻す条件とは 高いインフレ率はまもなくピーク越えも?
これについて、おおよその目安を把握するには30年金利の水準を起点に考えるのが1つの手だ。一般的に30年といった満期まで時間の長い金利は、2年や3年といった比較的短期間の景気変動よりも中長期的な経済・物価見通しに基づいて取引される。そのため、市場参加者の予想する「経済が正常な状態の金利水準」に近づく。
では中長期的な経済・物価見通しは何に基づいて形成されるかと言えば、それは潜在的な経済成長率やインフレ率などである。それに近い概念として「中立金利」というものがある。これはFRBが四半期に一度、ドットチャートと呼ばれる政策金利見通しを示しており、現在のその水準は2.5%とされている。
過去、30年金利はFRBが示す中立金利に沿って推移してきた。株式市場が楽観的な空気で包まれていた2021年12月に、30年金利は2%以下で推移していたが、1月入り後は2%を明確に超えて推移している。
株価は10年国債金利2%超で底を打つ可能性
では、30年金利が中立金利とされる2.5%程度まで上昇を試すと仮定し、それを基に10年金利を計算してみよう。そうして得られた10年金利の数値は2.0%程度であった(※短期的には10年金利と30年金利の差が一定であると仮定し、過去3カ月間のデータを用いて回帰分析した)。
「30年金利=2.5%、10年金利=2.0%」は多くの投資家が目安としている水準に近いだろう。
逆に言えば、その金利水準に到達するまで株式市場では「金利上昇懸念」が残存し、株式市場への資金流入は限られると考えることができる。「株価はいつ底を打つか?」と聞かれれば、それは「10年金利が2%を超えた時」というのが1つの答えになる。
株式市場がアメリカ金利上昇を警戒しているのは明白だが、それと並行して「リバウンド景気」が一服していることも重要だろう。例えば、株式市場で重要視されるISM製造業景況指数は高水準を維持しているとはいえ、下向きのカーブを描いており、投資家マインド悪化に拍車をかけている。
もちろん、過去数カ月の景況指数低下の背景にサプライチェーン問題による自動車生産の抑制があり、こうした一過性要因によって弱さが誇張されている可能性は否定できない。だがコロナ禍における財需要一服と相まって、景気循環が「冬」に向かっている可能性がある。製造業の景気サイクルが2年程度の波を描いてきたことを踏まえれば、循環的な時機の悪さを意識せざるをえない。
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