世界が大騒ぎ「ロシアのウクライナ侵攻」その理由 なぜそこまでウクライナに執着するのか

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このようにロシアの兄弟民族であるウクライナ人が、ロシアとの歴史的・文化的紐帯を断ち切り、国内のロシア文化を否定し、ロシア語を排除しようという動きを見せていることが、ロシア人には許容できないのである。これはロシアにとっての歴史文化的アイデンティティの否定に他ならない。

しかも、ロシア文化圏に属するドンバス住民を武力攻撃している(とロシアには見える)のである。これが、ロシアがウクライナ問題に強硬に固執する国民心理的な理由だ。

ウクライナは停戦協定に後ろ向き

この内戦状態を打開するために、ドイツとフランス、そして欧州安全保障協力機構(OSCE)が動いて、2015年2月に現行の停戦協定である「ミンスク2」がウクライナとロシア、分離派武装勢力(自称「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」)、およびOSCEによって署名された。この協定は、当時のドイツのメルケル首相の尽力により実現したもので、ウクライナ情勢の安定化にとって最も重要な政治的合意となっている。

これによって熾烈な戦闘は回避されたが、散発的な交戦は続いており、戦線は膠着状態となっている。ミンスク合意の履行を欧米諸国が求めるのは当然として、興味深いことに、ロシアがミンスク合意の履行の重要性を繰り返し述べているのに対し、ウクライナ側はミンスク合意に否定的であることだ。

どういうことなのか。ミンスク合意は単なる停戦合意ではない。停戦ラインと中立地帯を定めるほか、地方分権化を進め、ドンバス地域の特別な地位、つまり強い自治権を認めることや、それに伴う首長選挙が行われるべきことなどの政治条項が含まれているのである。

ウクライナがこの合意を否定的にとらえ、ロシアが肯定的にとらえている背景にはこうした事情がある。そして、ロシアのウクライナにおける目標は、ドンバス地域に自治権を確立させて、親露派地域としてウクライナに残すことだ。ロシアが不満を募らせている本当の理由は、ウクライナ政府が停戦協定を守らず、ドネツク・ルガンスク一部地域の武力による奪還を試みていると考えていることにある。

このように見てくると、ロシア側からの見え方と欧米からの見え方は全然違うことに気が付くだろう。この「見え方の違い」が最も危険なのである。緊張緩和に向けた重要な方途は、相手側の見え方、受け止め方をよく理解して行動することだ。

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