人口減の中で「超便利な物流」を維持できるか 最終回は、JR貨物でモーダルシフトを考える

✎ 1〜 ✎ 24 ✎ 25 ✎ 26 ✎ 27
拡大
縮小

モーダルシフトは人手不足だけでなく、環境問題の解消にも一役買う。鉄道貨物輸送の二酸化炭素排出量は、営業用トラックの約6分の1。シフトが進めば、その分、地球温暖化を抑制できる。

日本では、モーダルシフトの主役は、JR貨物である。国鉄時代には、遅い、不便、ストがある、ということですっかり嫌われた鉄道貨物だが、実は速度も、コンテナも、ターミナルの利便性も進化を続けている。

「東京―大阪間の輸送に何日もかかると誤解されることもありますが、スーパーレールカーゴ(M250系電車)なら、6時間程度しかかかりません」と、同社の相談役で第4代社長を務めた伊藤直彦さんが言う。

画像を拡大
JR貨物本社に飾られている歴代の機関車や貨車のNゲージ模型(撮影:尾形文繁)

実は、ボクは隠れ貨物マニアで、JR貨物の機関車のNゲージ模型をほとんど持っているほどだ。世界経済を動かしている「コンテナ」のネットワークにも、人並み以上の関心を持っている。その目線から見て、これまでにJR貨物は、大きな進化を続けてきている。

年間輸送量=10トントラック約300万台分をどう運ぶ?

まず、トラック輸送との連携強化に努めてきた。E&Sコンテナ荷役方式の導入はそのひとつだ。

従来は、貨物列車の着発線では、荷役ができなかった。フォークリフトなどで荷役をしようとすると、架線に接触する怖れがあったからだ。このため、貨物列車を、架線のない荷役線まで、ディーゼル車で誘導する必要があった。しかし、これには時間もコストもかかる。そこで、コンテナを上から釣り上げるのではなく、下から持ち上げるなどして、着発線に停車したまま、荷役ができるようにしてきた。

31フィートコンテナの導入も進めてきた。これは、内寸が9245ミリ×2350ミリ×2210ミリで、積載重量が13.8トンのコンテナである。従来の12フィートコンテナ、通称、ゴトコンより大きく、そのまま大型トラックに乗せることができる。これで貨物列車からトラックへの積み替えの作業が不要になる。従来、鉄道コンテナにはゴトコンが使われることが多かったので、どうしても積み替えが発生していた。その手間を省いたのだ。

次ページ生まれ変わりを見せている鉄道貨物
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT