【産業天気図・ソフト・サービス】製造業のIT投資回復鈍く、1年通して「曇り」で足踏み

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

ソフト・サービス業界の景況感は、2011年3月まで1年通じて「曇り」と低調にとどまる見通しだ。大型長期案件を抱える大手は、金融機関の統合や通信業者向けの案件があり、比較的堅調。だが、製造業のIT投資意欲は回復がはかばかしくない。08年後半に散見された商談の先延ばし、解消は一段落し、クラウド・コンピューティングや新国際会計基準などに関連した引き合いは着実に増えている。だがそれがビジネスにまで結実しない状況だ。

SI最大手クラスでも、4~6月期(第1四半期)の動きには多少の跛行性が現れたものの、総じて元気はない。富士通、NECとも通信向けの需要が増えている。スマートフォンの利用が増えるに従い通信トラフィックが増えているためだ。だが、システム開発のほうは引き続き減少しており、なかなか回復が見えてこない。SI専業最大手のNTTデータでは、中央官庁の事業仕分けの影響もあり、より顕著に現れている。

また、ここ1~2年大手各社が需要獲得に力を注いでいる海外案件だが、円高の影響をもろに受けて売上高、採算とも低下。一時的に見送らざるをえない状況にある。ただ、「以前は声もかからなかった規模の案件の入札参加打診も増え」(NTTデータ)ており、中期的な海外展開の下地は出来始めていると見てよさそうだ。

富士通はクラウド関連のネットワーク構築、NECは次世代携帯通信ネットワークなど、SI最大手クラスには国内だけでなく海外での需要増も。一方で、中国の人件費上昇もあり、単純なオフショアだけでは人件費の抑制は難しい。円高に耐えうるコスト体質を固めることも重要になる。NTTデータでは、M&Aによる海外事業拡大を積極的に進める方向を変えていない。

新国際会計基準(IFERS)への対応も、15年度からの強制適用に向けて、12年度内には連結大手各社とも、対応を迫られる。今期後半にはシステム構築のためのコンサル事業が徐々に立ち上がるはずだ。

曇りの中でも徐々に雲が薄くなっているのは確か。今は、需要の本格回復のタイミングがいつ来るのか、伸長に時期を見計らっているところだ。
(小長 洋子=東洋経済オンライン)

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