2代目に継承、JR四国「伊予灘ものがたり」の秘訣 乗務員以外に人気支える「おもてなし役」の存在
こうした“沿線でのおもてなし”は、当然JR四国も把握している。住民が待つポイントで列車は徐行し、車内アナウンスでも「右側の民家から、いつも家族で手を振ってくれます」などと案内。アテンダントなどがお礼のあいさつに訪れることもあるそうだ。
地域、乗客、そしてJRの三者が楽しさを提供し合う。その結果が、高い乗車率と満足度に表れたといえるだろう。運転士にとっては、随所で人が歩くスピードまで徐行するため、いかに衝動の少ない加減速を行うかが腕の見せどころだという。
「伊予灘ものがたり」の成功を受け、JR四国は2017年に「四国まんなか千年ものがたり」、2020年に「志国土佐 時代(とき)の夜明けのものがたり」の運行を開始。いずれも「伊予灘ものがたり」でつちかったノウハウが注ぎ込まれ、好評を博している。
“弟”にあたる列車は特急列車用のキハ185系を改造した車両が使われたのに対し、“長男”の「伊予灘ものがたり」はそれより古い普通列車用のキハ47形を改造しており、老朽化が進んだことから、前述のとおり2021年12月にラストランを迎えた。
新車両は特急列車に
だが、もちろん列車がなくなるわけではない。JR四国は2022年1月25日、新たな「伊予灘ものがたり」が4月2日にデビューすると発表した。ベースとなる車両はキハ185系。カラーリングや1号車と2号車に付けられた「茜の章」「黄金の章」の愛称など、基本コンセプトは受け継ぎつつ、初代の2両編成から3両編成となり、定員は8人ほど増加する。同社の観光列車で初となる個室も設けられる予定となっている。
一方で、リニューアル後は特急列車となり、特急料金の加算に加えてグリーン料金も上がるため、乗車料金は1700円の値上げとなる予定だ。現状でも“お値段以上”の満足度を得られる列車ではあるが、リニューアルを機に、より楽しめる観光列車となることを期待したい。
初代「伊予灘ものがたり」車両は2022年1月21日、京都市にある京都鉄道博物館の本館1階で展示が始まった。期間は3月22日まで。JR四国の半井真司会長は、引退後の同車について「何らかの形で保存したい」と前向きな姿勢を見せたとの報道もあり、今後も同社観光列車の“立役者”から目が離せなそうだ。
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