他方、「伊予灘ものがたり」の人気の秘訣は、こうしたハード面だけでなく、ソフト面にもある。といっても、観光列車ではもはや定番となった、乗務員によるサービスのことではない。「伊予灘ものがたり」に乗ると、駅員やJR四国のスタッフだけでなく、沿線で多くの人々が手を振って出迎えてくれることに気づくだろう。中には、大きな横断幕や旗を掲げたり、凝った仮装をしたりする人の姿も見られる。もはや、「伊予灘ものがたり」の魅力の1つと言っても過言ではない。
こうした人々は、もちろんJRから依頼されて手を振っているわけではない。例えば、野生のタヌキが顔を見せることで知られる予讃線の五郎駅では、着ぐるみを着た「たぬき駅長」が列車を出迎えている。この駅長は2014年の運行開始当初から独自で取り組みを続けているのだが、次第に参加する人が増え、今では20人近くが集まることもあるという。
たぬき駅長「住民の交流の場」
以前、筆者が「伊予灘ものがたり」の撮影の合間に同駅を訪れると、集まった人々が“お茶会”の真っ最中だった。「最初は列車が珍しくて出迎えに来たんです。こちらが手を振ると、列車に乗っている皆さんも笑顔で手を振りかえしてくれるので、それがうれしくて。でも、何度も続けているうちに、みんなで駅に集まること自体が楽しくなってきました。今では、住民同士の交流の場にもなっています」と、たぬき駅長が教えてくれた。
JR四国「伊予灘ものがたり」
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2021年末に引退した「伊予灘ものがたり」の初代車両
(撮影:伊原薫)
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伊予大洲駅で出発を待つ「伊予灘ものがたり」
(撮影:伊原薫)
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八幡浜方の1号車は赤色をベースとした
「茜の章」車両(撮影:伊原薫)
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松山方の2号車は黄色をベースとした
「黄金の章」車両(撮影:伊原薫)
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「Last Run」の文字が入ったヘッドマークも
取り付けられた(撮影:伊原薫)
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1号車「茜の章」の車内。山側の座席は海側の景色が
見えるよう一段高くなっている(撮影:伊原薫)
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2号車「黄金の章」の車内。1号車とは違った雰囲気だ
(撮影:伊原薫)
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松山駅の発車時には駅員らが手を振って見送る
(撮影:伊原薫)
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車内の記念撮影用ボードもラストランイヤーの
特別仕様(撮影:伊原薫)
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食事も各便や季節ごとに変更。写真は第1便「大洲編」の
モーニングプレート(撮影:伊原薫)
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重箱に地元の食材を詰め込んだ、午前発の
第2便「双海編」のランチ(撮影:伊原薫)
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第4便「道後編」のアフタヌーンティーセットは
数量限定で人気が高かった(撮影:伊原薫)
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途中駅で席を離れた乗客のカップにラップをかける配慮も
(撮影:伊原薫)
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ドア付近には消毒液を配置。感染拡大防止に
配慮がなされていた(撮影:伊原薫)
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伊予市と大洲市にまたがる喜多灘駅。右側の看板は
アテンダントの発案で設置された(撮影:伊原薫)
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途中、車窓から伊予灘が一望できる
(撮影:伊原薫)
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「海に近い駅」として知られる下灘駅では
しばらく停車する(撮影:伊原薫)
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沿線の随所で住民によるお出迎えが見られた
(撮影:伊原薫)
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画面中央の電柱付近に旗を振る人が。アテンダントが
的確に見つけてアナウンスする(撮影:伊原薫)
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五郎駅でのお出迎え。かわいい2代目「たぬき駅長」の
姿も見られた(撮影:伊原薫)
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「伊予灘ものがたり」運行開始時から五郎駅で出迎えを
続ける初代「たぬき駅長」(撮影:伊原薫)
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伊予大洲駅南側の大洲城では、列車の通過に合わせて
職員らが旗を振る(撮影:伊原薫)
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五郎駅で「伊予灘ものがたり」を出迎える住民
=2015年5月(撮影:伊原薫)
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五郎駅で「伊予灘ものがたり」を出迎える住民
=2015年5月(撮影:伊原薫)
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五郎駅で「伊予灘ものがたり」を出迎える住民
=2015年5月(撮影:伊原薫)
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