息子が塾ナシで「慶應と美大合格」ある家族の秘訣 "勉強一色とはほど遠い"生活からの逆転

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「でも、大学には行きたくても、受験勉強はしたくないんです。その気持ちはわからないでもないし、バンタンも結局、ギリギリまで通ってたので、またリサーチが得意な私が受験勉強しなくても入れそうな学部を調べまくりました。ただ、わざわざ高いお金払って行くなら教育の質も学生の質も高い大学がいい。三流大学に行くなら専門学校のほうがよいと思っていたので、大学はかなり絞り込みました」(緑さん)

音楽とファッションが好きな長男は、そのときすでにDJをはじめていてクラブのフライヤーをつくったり、リメイクTシャツを作って販売したり、イベントのキュレーションをするなど幅広く活動していた。そこで緑さんは本人と相談して、キュレーションを本格的に学べる有名美大を選んだ。

「美大って、昔はデッサンができないと入れなかったけれど、今は入試方法の選択肢がたくさんあるんですよね。武蔵美の造形学部芸術文化学科は、実技なしで受けられるし、英語受験できる枠があるから、『これならいけるかも!』と思って受けさせました」(緑さん)

親も子どもも、ありのままの自分で生きられるように

そして、次男が独学で慶應大学に合格した同じ年に、年子の長男も塾、美大予備校なしで武蔵野美術大学の合格を果たした。兄弟の子育てを振り返ってみて、何がポイントだったと思うか2人に改めて聞いてみた。

「大人でも寝不足だったり空腹だったりするとやる気が出ないように、受験生も体調が整っていない状態で実力を100%発揮することはできませんよね。やっぱり幼少期から睡眠や食事の基本的な生活習慣を大事にしてきたことで、受験期間も自分で体調管理がちゃんとできたんだと思います。

あと、本人がやりたくないことは無理にやらせないこと。最初は、『長男のほうが勉強好きの資質があるかな?』と思っていたけど、実はそうじゃなかった。それがわかってから、親が大学受験を勧めることはしませんでした。

そのかわり私たちは、子どもたちが好きなことが何なのかよく観察して、親にできることは可能な限りサポートしました。次男には本やマンガを与えましたし、長男とは趣味の話が合ったのもよかったのかもしれません。といっても親にも、できることとできないことがある。結局、親の資質と子どもの資質の折り合いがつくところで教育するしかないんだな、と2人の大学受験が終わって改めて痛感しました」(緑さん)

「本人がやる気にならなければ、親がいくら自分の夢や理想を押しつけても意味がないんですよね。もし子どもに自分の人生を楽しんでほしかったら、まず親が自分の人生を楽しんだほうがいい。それに親も完璧じゃないから、やりたいようにやって、悩んだり苦しんだりしたときも、ありのままの姿を見せてきました」

エリンさんはトランスジェンダーで、3年前に出身地のアメリカ・テキサス州で性別と名前を正式に変更している。

「トランスジェンダーとしてずっと苦しんできた私が、3年前に性別を正式に変えたときも、子どもたちに真っ先に伝えたらすんなり受け入れてくれました。次男は『今までつらかったね』と書いた手紙をくれて、涙が止まりませんでしたね。彼の反抗期は大変だったけど、本が好きなこともあって、人の気持ちがわかるやさしい子に育ってくれました」(エリンさん)

日本では同性婚が認められていないため、エリンさんは今も日本の婚姻関係の書類上では「男性」のままだ。そのため緑さんとエリンさんは、エリンさんの性別をアメリカでの性別と同様の「女性」と合わせるよう国を提訴しており、息子たちも賛同している。「誰もがありのままの自分で生きられる社会を作りたい」という両親の思いは、そのまま子どもたちに対する思いでもあるのだ。

樺山 美夏 ライター・エディター

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かばやま みか / Mika Kabayama

リクルート入社後、『ダ・ヴィンチ』編集部を経てフリーランスのライター・エディターとして独立。主に、ライフスタイル、ビジネス、教育、カルチャーの分野でインタビュー記事や書籍のライティングを手がける。

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