【産業天気図・化学】自動車やデジタル家電市場の調整とともに停滞の可能性。1年終始「曇り」へ後退

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 とくに目立ったのは住友化学。子会社を通じた米国の医薬品会社の買収で特許権などの償却費が大幅に膨らむことを懸念して期初は営業減益予想(前期比32%減の350億円)だったが、第1四半期だけで営業利益を340億円稼ぎ、通期営業益予想は700億円(前期比36%増)と従来予想から2倍となる大幅な増益予想に転換した。四季報秋号は会社予想が、さらに上振れする可能性があるとみている。

最大手の三菱ケミカルホールディングスや旭化成は、第1四半期の好調な出足を受けて今上期予想を上方修正。2社ともに通期予想は据え置いたが、四季報秋号は2社ともに通期据え置きは慎重とみて、今期の上振れを想定している。

一方、今期は下期以降の収益環境に不安要素が漂い始めている。まず、上期は好調に推移した中国向け輸出の息切れが懸念される。中東や中国で石化製品の基礎原料となるエチレンの大幅な増産が相次いで立ち上がってくることで、日本勢が打撃を受ける可能性がある。世界景気の回復を牽引してきた中国経済も調整局面に入る可能性があるほか、米国経済の減速が懸念され始めている。日本国内では、10年内いっぱいの予定だった家電エコポイント制度が11年3月まで延長される見込みだが、エコカー減税は今年9月末に打ち切りを迎え、10月以降は大幅な反動減が予測される。

こうした状況から、四季報秋号も今11年3月期については主要な化学メーカーの増収増益幅を拡大する予想を立てたが、増額は上期の好調分を主に反映。今下期は上期に比べると増益ペースが鈍化、減速、悪化する想定となっている。業績改善のピークは10年4~9月期。11年3月期を通期でみると増益ペースだが、マクロ景気の弱含みを要因に上期に比べて下期の業績拡大ペースが鈍化する。

四季報秋号における化学セクター162社の来12年3月期は、売上高が11年3月期比4%増、営業利益は8.5%増と増収増益ペースがさらに鈍る。化学業界は当面、曇り空の天気が続きそうだ。
(武政 秀明=東洋経済オンライン)

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