「接種証明」義務化するフランスと日本の決定的差 日仏の「ワクチンパスポート」を比較してみる

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一方で、フランスは観光客など国外在住の外国人に対して、もっと簡単に国内の接種証明書を発行できる仕組みを整えている。パリ市内に多数点在する発行業務を行なっている薬局で、それぞれの国の接種証明書の原本(紙に限る)とパスポートを提示し、手数料36ユーロ(約4700円)を支払えば、その場で発行してくれる。

今後日本も国を再び開いていくなら、海外から訪れる人へ向けた何かしらのシステム整備が必要になるだろう。

そもそも用途が違う日仏のワクチンパスポート

国外からの需要という点で見ると、まだ十分に備えられていない日本のワクチンパスポートだが、同パスポートの使われ方は日仏で大きく違う。日本では、フランスのように国として接種証明書を使った施設への出入制限を一律に行なっていない。主な用い方は、携行することで施設やイベント会場などにおいての「特典の付与」にとどまっている。

この「特典の付与」に関しても、国が一律に提示方法および接種証明書の内容について、ルールを定めているわけではない。日本の厚生労働省が開設している新型コロナウイルスワクチンに係る電話相談窓口に問い合わせたところ、「日本の接種証明書を提示した場合のみ」なのか、または「海外の接種証明書でも同様の特典が得られるのか」の判断は、サービスを提供している団体次第という。

ワクチン接種により人の行動制限を行なっているフランスにおいて、人々はどう考えているのか。フランスの調査会社オドクサが昨年10月に行った統計によると、衛生パス(ワクチン接種や陰性証明)を使い人々の行動に一定のルールを設ける政府の政策について、62%が賛成と答えた。

さらに今フランスでは、これまで「24時間以内に実施した陰性証明」でも取得できた衛生パスを、「ワクチン接種をした人のみ」に限定する(つまり衛生パスのワクチンパスポート化)法律が1月24日から施行される。飲食店や文化・娯楽施設、長距離交通機関の利用はワクチン接種を済ませた人のみに限られ、ワクチン未接種の人は、今までのように陰性証明だけではこれら施設や手段を利用できなくなる。

これについてフランスの調査会社Ifopによると、54%のフランス人がなるべく早急な切り替えに賛成、一方で46%が慎重または反対の立場を取っているという結果だった。

コロナ禍が世界を襲い始めたとわかってから約2年が過ぎた。私たちが以前に近い生活を取り戻していくためには、いくつかの段階が踏まれていくはずで、その一つにはワクチン接種証明書を用いた一定のルール作りというものが日本でも行われるかもしれない。

日本という国は、過去に経験がないことが起きた際に、そこに向けて前例のない何かを世界に先駆けて決めて一歩を踏み出していくということが、なかなか起こりにくい社会システムではある。しかしその後発の優位性を活かし、他所であぶり出されてきた問題点を精査しながら、より良い道筋を作られていくことに期待したい。

守隨 亨延 ジャーナリスト

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しゅずい ゆきのぶ / Yukinobu Shuzui

愛知県出身、パリ在住。ロンドン大学クイーン・メアリー公共政策学修士修了。東京で雑誌記者、渡仏後はANNパリ支局勤務などを経て、現在は『地球の歩き方』フランス・パリ特派員。フランス外務省外国人記者証所持。主な取材分野は日仏比較文化と社会、観光。故郷の愛知県東海市では『聚楽園大仏を次の世代に伝える会』代表として関連文化財の保護活動に従事する。

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