「接種証明」義務化するフランスと日本の決定的差 日仏の「ワクチンパスポート」を比較してみる

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フランスの「TousAntiCovid」の場合、読み込んだQRコードが本人のものか確認する仕組みが備わっていない。そのため接種証明(QRコード)の売買や、他者の接種証明を自分のアプリに読み込ませ、飲食店に入店する犯罪が現在問題になっている。不正な接種証明の利用には135ユーロ(約1万7700円)の罰金が科せられるものの(再犯の場合はさらなる厳罰に処される)、フランスのダルナマン内相が1月4日に述べた公式発表によると、昨年12月30日だけでも、約20万件の不正利用があったそうだ。

(写真:筆者撮影)

実際、フランスの人々はどこまで正しく提示しているのか。パリ市内のいくつかの飲食店で尋ねてみると、いずれの飲食店においても、あきらかに本人ではなさそうだと思われる名前の接種証明を提示されることがしばしばあるそうだ。しかしながら、飲食店など施設側には本人確認の義務はない(同行為は警察の職務となっている)。施設側が義務付けられているのは接種証明の確認のみで、それを怠った際にのみ一時的な業務停止命令や、再発には懲役1年と9000ユーロ(約120万円)が科せられる。

これら不正行為が横行しているフランスだが、日本の新型コロナワクチン接種証明アプリでは、マイナンバーカードとひもづけることで、その可能性をより減らそうとする試みがなされている。

日本国外からの需要には対応できず

フランスと比べれば不正利用を防げる方法を取っている日本のワクチンパスポートだが、万能ではない。海外からの需要には対応していないからだ。現時点では日本国内に住民票がない人(観光客やビジネス客など一時滞在の外国人や一時帰国の在留邦人)はアプリを使用できない。マイナンバーカードがないと、アプリに接種証明を読み込ませられないからである。

加えて、国外でワクチン接種し接種証明書が外国のものである場合にも、これをアプリに読み込ませられない。読み込みは日本国内で発行された接種証明書に限られている。

なぜ登録できないのか地元自治体の担当部署に問い合わせた。発行に際してその人から提示された接種証明書の内容が本当に正しいかどうか、データベースにつなげて照会しているが、外国の接種証明書だと、その国のデータベースに問い合わせできないため照合作業ができないからだという。

これと同じ理由で、日本に住民票がある状態で海外にて新型コロナのワクチン接種をした場合も、その自治体には接種履歴は反映されない。データ上は「ワクチン未接種」のままになっている。

次ページ簡単に国内の接種証明書を発行できる仕組み
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