なぜ日本は沈黙?「子宮頸がんワクチン」の大論点 4月から定期接種化するのに議論盛り上がらず

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ワクチンを開発したルイ・パスツールの故郷であり、サノフィという大手ワクチンメーカーを有するフランスはどうか。

「真の反ワクチン派はフランスの人口の2%程度だが、非常に活発で、人々に接種をためらわせる」とワクチン業界のベテランは言う。「ワクチンに対する信頼性に加え、ワクチンの供給に関する医療制度への信頼も高めることが重要だ。今後、医療従事者やコミュニティのリーダーの意見に耳を傾けることが重要な役割を果たしていくことだろう」と、サノフィのグローバルワクチン渉外本部長イザベル・デシャンプ氏はいう。

フランスでは、「インフォックス(infox:「information」(情報)と「intoxication」(中毒)をあわせた造語)」に対抗するため、政府や民間企業、予防接種推進NGOは、ワクチンにかんするデータを単純明快な形式で公開する取り組みを実施。政府独自の広報活動を行っているほか、患者会や医師会などの団体によって運営されているプラットフォームも支援している。

そのために、フランス政府は独自の広報キャンペーンを開始した。同時に、患者会、医師会などの団体によって運営されていることから、国民により信頼されている情報サイトの支援。結果、2018年に接種が義務付けられるワクチンを3種類から11種類に増やした際も、特に大きな反対運動は起こらなかった。

ワクチン承認に向けたコミュニケーションの仕方も日本とは異なる。フランスとアメリカでは、ワクチンの承認手続きは、一般市民とワクチン企業を含むすべての関係者に公開されている。専門家たちによれば、日本では、ワクチンの承認プロセスは透明性がなく、国民との対話もない。

日本が「ワクチン後進国」になったワケ

2019年1月、WHOはワクチンへの躊躇を世界の健康に対する脅威のトップ10の1つとして挙げている。しかし、日本はいまだに世界のワクチン接種の動きに遅れをとっている。

それにはいくつかの理由がある。「日本の課題は、国民皆保険制度が充実していることだ。こうした状況では、ワクチンのような予防策は理解を得にくい。対照的に、医療制度が貧弱なアメリカでは、ワクチン接種の承認制度が充実している」と、双方の制度に詳しいあるロビー活動家は言う。

もう1つの理由は、日本の製薬業界がワクチンに無関心であることだと海外の製薬会社幹部は言う。日本のワクチン会社は少なく、規模も小さい。

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