なぜ日本は沈黙?「子宮頸がんワクチン」の大論点 4月から定期接種化するのに議論盛り上がらず

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そして何よりも、日本のマスメディアがワクチン接種の「全体像」を理解しておらず、批判ありきの報道が先行し、これを政府が"恐れている"ことだ。「今回のHPV騒動で特に日本的なのは、厚労省がメディアの圧力に屈したことだ。

フランスやアメリカでもワクチン接種に対する反対運動が行われることがあるが、政治家はたいてい引き下がらない」と、2013年のHPVワクチンの発売に関わった外資系製薬企業の従業員は話す。

医師の家系に生まれたフランスのエマニュエル・マクロン大統領も同様の態度をとっており、1月4日のインタビューで新型コロナワクチン未接種のフランス国民を叱責したのは有名な話だ。

ワクチン接種に反対する国民を「無責任でもはや国民ではない。彼らの社会生活をめいっぱい制限し、とことんうんざりさせてやりたい」とこき下ろした。この攻撃的なコメントは、マクロン大統領の反対勢力からの反発を招いたが、その2日後の世論調査では、フランス人の59%が同大統領に同意していることが明らかになった。

接種率70%まで回復するのは難しい

HPVワクチンをめぐる日本の騒動は終わっていない。昨年10月に厚労省がHPVワクチンを「推奨」する立場に切り替えたとき、国内メディアはほとんどコメントしなかった。あるロビー活動家は、「厚労省はようやくHPVワクチン接種の『推奨』に転向したものの、若い女性のワクチン接種を後押しするような効果的なキャンペーンを行っていない」と言う。それは「沈黙の推奨」だ。

「厚労省の中には、副作用による責任問題をおそれてHPVワクチンを推奨することに反対している官僚もいる」と外資系製薬会社の経営トップは言う。同氏は日本の接種率が2013年の70%を回復することはないだろうと考えている。

欧米の専門家を中心として、こうした無関心が、何万件もの予防可能ながんと、何千人もの死を招くことになる可能性があるとの危惧が広がっている。「もし接種率が回復しなければ(中略)、2020年時点で12歳の個人に限って言っても、生涯のうちに、回復した場合と比べて3400~3800件多くの症例と700~800人多くの死亡者が発生するだろう」と前述の『ラセット』誌は書いている。

私自身はというと、2人の娘にHPVワクチンを接種させている。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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