なぜ日本は沈黙?「子宮頸がんワクチン」の大論点 4月から定期接種化するのに議論盛り上がらず
こうした中、2009年の新型インフルエンザのパンデミック時には、日本政府の準備不足が露呈。ワクチン接種は国家の安全保障上の問題となり、厚労省は急遽、海外の製薬会社に日本のパートナーとの連携を打診。ワクチン大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)とMSDが、それぞれのHPVワクチン「サーバリックス」と「ガーダシル」の供給を日本の当局に提案したのも、こうした事態を受けてのことだ。
「HPVワクチンは、感受性の高い10代の若い女性を対象としていること、効果が表れるのは30年後であることなど、大きな課題がある」と、大手外資製薬会社の幹部は言うが、ガーダシルなどは、2010年、外国製、かつ当時としては革新的だったにもかかわらず、日本政府に承認された。
当時、子宮頸がんを経験した自民党の三原じゅん子議員は、HPVワクチンの早期承認を熱心に主張。「HPVワクチンの接種プログラムが国の補助金を得るのがとても早かったので大変驚いた」と、HPVワクチンメーカーの元幹部は振り返る。
適切なコミュニケーションが足りずに…
そして2013年4月1日、HPVワクチンは、日本で待望の国家予防接種プログラムに、12歳から16歳の女子を対象として無料で導入された。が、その後ワクチンを接種した女子に副作用が出る可能性があると報道が続く。若い女性がけいれんする動画が世間で注目を浴び、「これによって状況は一変した。まったくで予期しなかった出来事だった」とMSDの元役員は語る。
「HPVワクチン接種の需要があまりにも高かったため、厚労省はワクチン接種を担当する医師に副作用にかんする適切なコミュニケーション方針を示さなかった。心配した親たちは誰にも相談できずメディアに訴えかけた」と、あるワクチンメーカーの元幹部は言う。
そして、2013年6月厚労省はついに、HPVワクチンをNIPの一部として残すが、推奨はしないという決定を下した。これにより、HPVワクチン接種率は低迷、1996年に生まれた女子の81.1%がHPVワクチンを接種していたのに対し、2001年に生まれた女子については6.1%、2004年に生まれた女子については0%にまで急減している。
HPVワクチンへの恐怖を和らげるために、厚労省は海外からジャン・ベイトウト氏を含む海外のワクチンの専門家を複数召喚。「厚労省には反ワクチンの政治家にワクチンの安全性を説得する目的があったと思う」とベイトウト氏は振り返る。
「それから1年以内に厚労省の代表者何人かがフランスを訪れ、フランスのワクチン承認プロセスを勉強しに来た。彼らによると、日本の政治家はHPVワクチンを積極的に推奨するのを怖がっていた」
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