目の前の問題しか見えない人と先を読む人の大差 できる人は「影響の影響」まで考えている

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何十年にもわたり食肉を安全で安価にするために家畜に抗生物質を与え続けてきたことも、二次的思考の欠如が要因です。「抗生物質を与え続けるとどうなるか」という視点が抜け落ちた結果、抗生物質に耐性を持つバクテリアが誕生しています。

カリフォルニア大学の生態学者ギャレット・ハーディンは、「私たちは何かひとつのことだけをやるわけにはいかない」とする「生態学の第一法則」を提唱しています。私たちが生きている世界は網の目のように複数の関係が重なり合っている。それを踏まえて、ハーディンは「『影響の影響』を考慮しないならば、それは何も考えていないのと一緒だ」と示しました。目先の利益を追い求めても、長い目で見ればそれに見合わない損失を被ることも多いのです。

どちらを選んでも損する二択問題

紀元前48年、エジプトのクレオパトラはある問題に直面していました。

兄弟同士が殺し合うことで有名な一族にあって弟と共同統治者だった彼女は、宮殿から追い出されて砂漠で野営を余儀なくされます。どうやって弟に反撃するか、見通しの立たない状況にいました。

クレオパトラはエジプトの女王という身分ですが、民衆が喜ばない政策を行い続けていたため不人気で、弟は彼女を暗殺する正当な理由を手にしています。

時を同じくして、ローマの名将シーザーがエジプトに到着します。自分が地中海世界の覇権を握っていることをエジプト人たちに思い知らせるためです。エジプトは肥沃な土地を有する、ローマ人にとって重要性の高い土地。しかし、エジプトの民衆はローマ進出に反感を覚え、現地では非常に悪評を呼んでいました。

クレオパトラは生き延びるため、決断を迫られます。

弟との関係を修復するべきか? それともシーザーと手を組むべきか?

アメリカのノンフィクション作家ステイシー・シフによると、クレオパトラはどちらを選んでも損をする状況でした。

「ある勢力を満足させると、別の勢力に不満を抱かせることになる。ローマに逆らえば介入を招き、ローマに弱腰だと民衆の暴動が起きる」

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