東武「浅草から北千住」途中駅には何があるのか 下町を走る「スカイツリーライン」の各駅停車

✎ 1〜 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 最新
拡大
縮小

そんなザ・下町の東向島を出ると、東武の電車はゆらりとカーブしながら鐘ケ淵駅に着く。鐘ケ淵、いわずと知れたカネボウの名の由来にもなっている鐘淵紡績があった町である。もちろん工場はとうの昔になくなって、いまは住宅地の中の駅である。駅のすぐ脇には踏切があって、昭和の商店街も駅前にあるような、そんな駅だ。

「鐘ケ淵駅も東向島駅と同じで、基本的には下町ですよね。すぐ近くに川があるからなのか、一度ホームでカニを見たんです。ちっちゃいカニを。駅の隣の飲み屋さんから逃げてきたのかなと思ったんですけど(笑)、駅員に聞いたらどうやってかわからないけど川からやってきて、ときどき現れるらしいんですよ」(岩波さん)

いくら下町とはいえ駅のホームでカニさんと出会うとはまさに奇跡。昭和はじめの一時期、木場の埋め立て地に洲崎球場という野球場があって、満潮時にはグラウンドをカニがはいずり回っていた、などというホントかウソかわからないエピソードを聞いたことがあるが、鐘ケ淵駅のカニは現代のお話。出会えた人は、きっといいことがあるに違いない。

金八先生の舞台の今

鐘ケ淵駅からは大きく左にカーブして荒川沿いへ、ちょうど墨田区と足立区の区界を跨いだところに金八先生でおなじみの堀切駅がある。駅のすぐ東側(つまり上り線側)は荒川の土手、西側(下り線側)には東京未来大学という大学のキャンパスがある。

堀切駅は線路のすぐ横が荒川の土手。奥には隅田水門と首都高(撮影:鼠入昌史)

上りホームと下りホームそれぞれに改札口がある構造なので、上り電車から降りた大学生たちは跨線橋を渡ってやってくる。東京未来大学はかつて金八先生の舞台、桜中学のロケ地として使われていた場所にある。

「金八先生のスタッフや武田鉄矢さんもよく行ったというお店も駅前にあったんですけど、いまはもう閉まっていますね。あとはというと……東側はもう荒川ですし、あとは住宅地があるくらいでとくになにもないんですよね」(岩波さん)

2020年度の1日平均乗降人数はわずか2755人。今回旅した下町区間どころか、スカイツリーライン全線(つまり東武動物公園駅まで)でもいちばんお客の少ない駅である。ただ、取材時にはけっこうな数の大学生が行き交っていたから、きっとお客の大半が学生たちなのだろう。

次ページ堀切駅の“注意点”
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT