「イスラム国」との戦いは第3次イラク戦争だ 畑中美樹・インスペックス特別顧問に聞く(上)
そのため、私は今のイスラム国の動きを「第3次イラク戦争」と呼んでいる。
第1次が1991年1~3月の湾岸戦争。米国はこれでサダム・フセイン政権を叩いたが、大量破壊兵器を持ったまま生き残ったという疑いを理由に2003年3~5月にイラク戦争を行った。これが第2次。結果としてサダム・フセイン政権は崩壊し、フセイン大統領も処刑された。
しかし、米軍がバグダッドに進攻した時に、フセイン大統領を守る強力な軍隊と言われていた共和国防衛隊の大半が忽然と消えてしまった。一方、バース党員はイラク民主化の過程で追放された。彼らが、台頭してきたイスラム国の指導者と嫌米、反米で一致し、戦術的な共闘を組んだ。したがって強力になったと考えられる。
米国のヘーゲル国防長官の議会証言などを聞いていても、イスラム国は単なるテロ組織ではなく、準国家組織のような言い方をしている。米国はその辺をよくわかっているのだと思う。空爆だけでは解決できず、数年以上かかると言っているのは、最終的には地上での戦闘で駆逐しない限り勝てないと考えているからだ。
問題はシリア、自由シリア軍はあてにできない
――米国中心の有志国連合が、イラクからシリアへとイスラム国に対する空爆を拡大しているが。
空爆だけでは終わらないことはわかっている。したがって、イラクについては、イラクの正規軍を米国の軍事顧問団によって訓練し、新たな軍備も供与して、イスラム国と地上で戦闘させている。
問題はシリアだ。米国はシリアのアサド政権とも敵対しており、同政権を支援するわけにはいかない。となると、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国や米欧が支援してきた反アサド政権組織の自由シリア軍を中心に、やはり武器を与えて、戦術・戦略も教えて支援していくことになろう。ただ、イラク正規軍とは違い、自由シリア軍は過激派組織で、人数も少数なので、イスラム国と対等に渡り合える戦力になるかははなはだ疑問だ。
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