データに根拠を求める人が陥りやすい「罠」の正体 「顧客満足度95%」広告のあやしさを説明できる?

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平均以外にも、データの中央を求める指標として「最頻値」「中央値」といった異なる指標が存在する。ここでは具体的な説明はしないが、データの見方の幅が広がるので、興味があればぜひ、調べてみてほしい。

ここで伝えたいのは、最初は専門知識がないと難しいかもしれないが、そこで計算された統計指標が適切であるか、せめて、どのような統計指標を使っているのかを確認してほしい。

自分の主張に合わない比較データは提示しない場合も

⑤比較データが不足していないか

5つ目は「比較データの不足」になる。例えば、商品Aの顧客満足度が65%と言われた場合、それは高いだろうか、それとも低いだろうか。

比較データとして、ライバル商品Bの顧客満足度が20%であるのならば、高いということになるし、それが85%ならば低いと思うだろう。同じ値でも、ほかのデータと比較することで意味合いが変わる。そのため自身の主張に合わない場合、あえて比較データを提示しないケースもある。

データの主張を受け入れる前に、比較データがなくても問題はないのか、その結果を受け入れるためには何と比較するべきか、といったものを少し考えてもらいたい。

以上、データにだまされないために気をつける点を5つ紹介してきた。

データを眺める際に、紹介した点を意識してもらうだけで、データにだまされることはかなり減るはずだ。データを眺める際に重要なのは、つねに「それってホント?」という疑いを持ち、紹介した点に問題がないかを確認していってもらいたい。

ちなみに、今後目にする広告や宣伝の表記に、今回挙げた点についての不足があったとしても、必ずしも悪意を持って行っているとは限らないので、指摘する際は質問する形で尋ねるのが無難である。

【参考文献】
ダレル・ハフ『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』(講談社ブルーバックス)

増田 純也 インテージ 先端技術部、滋賀大学データサイエンス学部インダストリーアドバイザー

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ますだ じゅんや / Junya Masuda

大学院修了後、主にマーケティング領域のデータ分析業務をフリーランスとして開始。その後、電通マーケティングインサイト(現電通マクロミルインサイト)を経て、2014年に株式会社インテージ入社。アンケートデータやPOSデータの分析業務を経て、現在は、社内外のデータサイエンス人材の育成に従事。

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