今年の日本株は後半大きく巻き返すかもしれない 前半は日経平均もNYダウも冴えない展開に?

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しかし、世界的に株価の持ち直しが期待される今年後半は、日本株の上昇率がアメリカなどほかの主要国を上回る可能性があると見込んでいる。その背景は、次の2つだ。

なぜ今年後半は日本株に「期待」できるのか

(1)日本株がエマージング、あるいはマージナルになっているため

実は海外投資家からは「日本株はエマージングだ」と言われることが多い。つまり、日本は形こそ先進国かもしれないが、株式市場については、海外投資家が買えば上がり、海外投資家が売れば下がるといった体たらくで、「まるで新興国の株式市場のようだ」と揶揄されているわけだ。

また、日本の株式市場は世界の株式市場の「核」「中心」ではなく、「へり」(マージン)である、とも言われている。

世界の株式市場の核といえば、やはりアメリカ株だ。世界的に株式投資に逆境となる事態となれば、当然アメリカ株も売られるが、核であるアメリカ株の保有額を極度に減らすということは想定しがたい。

それに対して、日本株がマージナルだと世界の投資家に認識されていれば、世界的に株式への資金配分を減らそうということになると、日本株は大いに売られてしまう可能性があるといえる。

逆に株式投資を増やそうという局面では、その前に大幅に日本株の保有を減らした分だけ、グローバルな投資家の日本株の保有額が高率で増加することになりやすい。

(2)日本経済が「世界景気敏感」であるため

日本では「世界トップクラスのグローバル企業」に値する企業は製造業に多い。その中でも、設備機械(工作機械、産業用ロボット、半導体製造装置、一般の産業機械、建設機械など)や、それを支える機械部品、電子部品などの分野が主力といえる。

こうした企業向けの機械類や部品類は、世界の設備投資や建設投資の動向に収益が左右される。設備投資・建設投資は、企業経営者の業況感の浮沈によって増減するため、世界の実体経済の振れ以上に大きく増えたり減ったりする傾向が強い(対して、個人消費は比較的安定して推移する)。したがって、日本経済の景況の上下動が世界経済より大きくなる。

ということは、2022年後半に世界市場が持ち直し「実体経済も堅調に推移するだろう」との業況感が世界企業の間で広がると、企業の設備投資や建設投資が大きな回復をみせ、日本の機械類への需要が大幅に挽回して、世界の投資家が日本企業の製造業中心の収益回復を期待するものと予想できる。これが、年後半の日本の株価上昇を大きくするだろう。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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