HP、パソコン・プリンタ分離は"茨の道" 投資家やアナリストから懐疑的な見方

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PCが復活するとしても、伸びるのはHPが得意とするデスクトップやラップトップではなく、アップルの「マックブック・エア」やグーグルの基本ソフト(OS)を搭載した「クロームブック」、マイクロソフトの「サーフェス・プロ」など新型モバイルコンピューターだ。

HPのPC・プリンター事業は一大勢力であり、今年度の同社の売上高1120億ドル(推定)のおよそ半分に相当する。しかし、前出のバーンスタインのサコニャーニ氏は、新「HP」は向こう数年間、売上高が年間およそ1%のペースで減少すると予想。「キャッシュは潤沢に生み出すものの、低成長もしくは無成長」のビジネスとの見方を示す。

サコニャーニ氏は「スピンオフは通常、新たな投資家を呼び込むものだが、HPのケースでも同じことが起こるのか不明だ」と述べた。

HPの株価はこの1年間で78%上昇、17%上昇したS&P総合500種指数をアウトパフォームしている。ただ、ハイテク株としてはなお割安であり、今後1年間の推定純利益に基づく株価収益率(PER)は約9倍と、大手ハイテク企業の平均の約12倍を下回る。

「ポストPC」時代への対応遅れ

HPは「ポストPC」への対応で遅れを取っているうえ、そのPCでも世界出荷台数のトップの座をレノボ<0992.HK>に奪われた。

アナリストの間では、新「HP」には合併・買収(M&A)が必要との声も上がっているが、その相手がどこになるのかは明らかではない。

ホイットマンCEOは6日、新「HP」の戦略について、アップルやアンドロイドが独占している消費者向け機器市場は重視しないと強調。代わりに3DプリントなどHPの強みを生かすとの方針を示した。

CEOはインタビューで「多くのイノベーションが進行中だ。人が思ってもいない分野で、その成果が表れるかもしれない」と述べた。

どちらにしても、PCの成長は、ホイットマンCEOにとって大きな関心事ではないのかもしれない。ホイットマン氏は、企業向けのハードウェアやサービス事業などが主体となる「ヒューレット・パッカード・エンタープライズ」のCEOに就任する見通しだ。

PC・プリンター事業分離でコストが膨らむ可能性もある。アナリストによると、HPは2011年に分社化構想を断念した際、年10億ドルのコスト増になるほか、分社化に伴い15億ドル程度のコストが一時的に発生すると試算していた。また、営業現場の混乱も予想される。

バークレイズのアナリスト、ベン・ライツィス氏は「現場とコミュニケーションを取らないと、顧客が他社に流れかねない」と警告している。

 

(Bill Rigby記者、Edwin Chan記者 翻訳:吉川彩 編集:橋本俊樹)

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