消える「ダイエー」、変容するイオンの統治 食品スーパーのブランド統合は進むのか
だが、イオン関係者は「確かに中長期的には1ブランドが望ましいが、小商圏の食品スーパーは地域に定着しているので事情が少し異なる」と慎重だ。首都圏では、15年3月に持ち分法適用会社のマルエツやカスミ、マックスバリュ関東を統合し、子会社化する。各スーパーの屋号はそのままだ。「これはダイエーとは別。イオンとしては2本立てで首都圏を攻略する」(岡田社長)として、“例外”の扱いにしている。
今年度、3~8月の既存店売上高は、イオンリテールが前年同期比1・8%減、上場している食品スーパーも4社が減収で採算は厳しい。「ダイエーと規模感は異なるが、屋号だけでなく、地域別の食品スーパー子会社を統合し、本部費用などの間接費の削減を図るべき」(アナリスト)との指摘もなされる。
自主性と効率性のバランス
イオンは子会社上場に積極的で、食品スーパーや専門店、ドラッグストアなどを幅広く上場させてきた。「各子会社の経営陣に責任を持たせることができ、上場という目標があることで『起業家精神』の発揮にもつながる」(イオン関係者)からだ。
だが、今後、組織の再編などが浮上した場合、子会社の上場が阻害要因になるおそれはないだろうか。ダイエーの場合、店舗の大幅な入れ替えのために、完全子会社化と上場廃止を選択した。岡田社長自身、ダイエー再上場の可能性を問われた際に「今後のデジタルシフトの中で、(イオンの)あるべき形は、今は想像できないような形に変わってくる。必ず再上場させるとは言えない」と、グループ形態を変えざるをえない可能性も示唆している。
一方、大胆なテコ入れで、逆ベクトルも働く。M&Aを進めることができた背景には、同社の自主性を重んじる姿勢があり、被統合企業に一定の安心感をもたらしてきた。しかし、ダイエーは、プライベートブランド商品、屋号、そして上場企業としての地位も失う。事例を作ったことで、この先、統合される側の安心感が減衰しかねない。
今後要求されるのはイオングループ全体の成長だ。屋号や会社の急速な統合を図れば効率化は進む。だが一方で、M&Aのハードルは上がる。このジレンマの中で、イオンはあるべきグループ形態を探っていくことになる。
(「週刊東洋経済」2014年10月11日号<10月6日発売>掲載の「核心リポート01」を転載)
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