告発スクープ!生コン「価格吊り上げ」疑惑 中部の高速道路に加え、リニアでも発覚した
冒頭の東愛知生コン組合のケースは、第二東名高速道路建設工事(新城・設楽管内)にかかる生コン販売だ。本来、工事(ゼネコン)ごとに決められるはずの販売店が、一つの工事を販売店数社で互いに回しながら仲介し、口銭(販売手数料)を得ようという、いわば流通段階での“談合”である。
実はこの東愛知のケースでも、飛騨、郡上のケースでも、中心となるのが、名古屋市に本社を置き、社員たった15名の、中部シー・アイ・アイという会社なのだ(代表取締役は市川義輝氏、株主は1名)。中部シー・アイ・アイは、飛騨、郡上における東海北陸自動車道の4車線化拡幅工事に絡んで、東愛知の第二東名工事のケースよりも独占に近い取引を行っている。
この東海北陸自動車道の拡幅工事は、民主党政権下で凍結されたもので、自民党政権になってから再開された。生コンを供給する地元の飛騨、郡上生コン組合は、通常なら数社の販売店を入れるはずなのに、なぜか最初から販売窓口を中部シー・アイ・アイ1社に独占させるという、全国的に類を見ない取引形態となっている。そして飛騨、郡上のケースともに、外からは不透明な価格形成が行われ、生コン価格は吊り上げられていった。
公取への告発、再調査
こうした状況に業を煮やしたある業界関係者が、昨年7月に公正取引委員会へ告発。今年5月、いったんは公取から「独禁法上、問題とすることは困難」との通知があったが、飛騨、郡上の案件については、異例ともいえる「なお」書きがあり、「関連する情報がさらにありましたら、お寄せください」との文言がつけられた。これは“グレー”という意味に取っていい。
その後、今年6月に告発者は「再調査願」を公取に提出。目下、公取が再調査中だ。
告発資料によれば、郡上では従来、登録販売店8社が生コン組合とゼネコンの間に入り、それぞれ独立した形で、工事案件ごとに仲介販売を行ってきた。だが、郡上生コン組合は商慣行を破り、参加しようとした6社の販売店を排除し、中部シー・アイ・アイ1社の独占販売とした。
こうした動きが目立ち出した2009年当時、物価調査会の建設物価・生コン価格(標準規格)は、1立方メートル当たり1万5800円(以下、価格は1立方メートル当たり)であり、これが上限の一つの目安となる。通常取引でゼネコンに納入される価格は1万1300円で、生コン組合から出荷される価格は1万0500円。つまりは差額の800円が、販売店とゼネコン契約窓口商社の受け取る口銭だ。
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