リニア、工事実施計画を申請、いよいよ着工へ 新幹線50周年とほぼ重なるタイミング

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2027年の開業に向けて、リニアが今秋にも着工される見通しとなった(写真は山梨県のリニア実験線、撮影:尾形文繁)

リニア着工が目の前に迫っている。

8月26日。JR東海は、リニア中央新幹線に関する、「環境影響評価書」の補正版を発表した。すでに4月23日に一度、国土交通大臣あてに送付していたが、その後の大臣意見を受けて、一部を修正。図や写真を用いて環境配慮の具体的な方法を説明を加えたほか、トンネル工事で発生する残土の処理先や地質調査を行った場所などにも触れている。

「国土交通大臣の意見の一つひとつについて入念に検討を行い、理解いただきやすいよう、より分かりやすい評価書にした」(宇野護・常務執行役員中央新幹線推進本部長)。さらに踏み込んだ内容として、工事やリニア運行で発生する二酸化炭素(CO2)の削減目標を掲げ、工事実施の段階で予測より6%、リニア走行では現時点の見通しよりも1割、エネルギー消費量を削減することを目指す。

会見ではリニアの工事に伴って発生する、大量の”残土”について処理の見通しにも触れた。「自治体を通じて発生残土の8割に相当する分の候補地の情報が集まっている」(宇野本部長)。通過する山梨県や長野県などについては、環境報告書の中で残土の活用先が触れられているが、さらに愛知県などでも処分する候補地の情報が集まっているという。

合計2万ページもの分厚さ

評価書の本編、資料編、関連図のページ数は、7都県分で合計2400ページ(平均3503ページ)を追加し、合計2万ページ(平均2400ページ)にまで及んだ。この日のうちに、国土交通相や関係する都県知事、市区町村長あてに送付。今後、1カ月間にわたって、各自治体で評価書が縦覧に供されている。

驚いたのはこれと同時に、東京―名古屋間のリニアの「工事実施計画」を、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)に基づいて、国土交通相に”認可申請”までしたことだろう。申請のタイミングについては、社内でも議論があったというが、環境影響評価の補正書を作成したことで「(認可申請の)環境が整った」(金子慎副社長)決断したという。

工事実施計画は、2009年の時点で作成された調査報告から、さらに精査が進んだ内容となっている。

ひとつは工事費だ。今回は総額を5兆5235億円(実験線部分は含まない)とはじき出した。中身については、トンネル工事費に1兆6219億円、軌道工事費に7243億円、停車駅の費用に5206億円、用地費に3420億円、橋梁費に2922億円、などとなっている。総建設費については、09年の見積もりから935億円増えている。工事の骨格が大きく変わったわけではないが、工事費の精査を進めてコストダウンをすすめた一方で、新たな技術導入と労務費の上昇によって、最終的には建設費が上がる結果となった。

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