(第29回)貧富格差の拡大に経済政策は無対応


格差の固定は日本経済全体の問題

図からわかるように、年間所得700万円以上の世帯数は減っている。つまり、豊かな人が減ったことは事実である。具体的には、所得1000万円以上では、各階層の世帯数が2割程度減っている。前回述べたように、一つ下の階層にシフトしたのだ。しかし、この階層では、所得が100万円減ったところで、10%未満の低下でしかなく、生活に大きな変化が生じたわけではあるまい。贅沢を減らすという程度で対応できるだろう。

その半面で、貧困階層に落ち込むと、子どもの教育が十分できなくなるので、階級の固定化が起こる危険がある。そして、格差が拡大する。だから、300万円未満の世帯が1000万円以上になるチャンスは、ほとんど失われてしまっているのではないだろうか。

高度成長期には、社会全体が豊かになるだけでなく、貧困層が富裕層になる可能性も開けていた。夢のある社会とは、そうしたものだ。閉塞的な社会とは、社会全体が成長しないだけでなく、貧困と富裕の間の壁が越えられなくなった社会である。

問題は、以上で見たような日本社会の構造変化に経済政策が対応しているとは、とても考えられないことだ。高校無償化や子ども手当に所得制限がないのは、驚くべきことだ。民主党のマニフェストでは、「貧困社会への対処」という問題意識は欠落していると考えざるをえない。

また、消費税は貧困階層にも等しくかかる税である。他方で、資産所得は他の所得とは分離して課税されており、法人税も減税しようとしている。だから、税制改革は、むしろ格差を拡大する方向に進もうとしている。マクロ経済政策も同じである。金融緩和や為替介入を行ったところで、企業は助かるだろうが、低賃金労働者に福音が及ぶとは、とても考えられない。

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