高インフレ時代は永遠に去ったのか 「机上の空論扱い」は間違い

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ユーロは得ばかりに見えたが、実際はそうでなかった。インフレ面での信頼の向上は、債務への信頼の低下で相殺された。もし欧州の周辺諸国が自国通貨を持っていたら、債務問題がすぐにインフレ高進に姿を変えていた公算が大きい。

私は、米国や日本のような経済で、すぐにインフレが戻るとは論じていない。米国労働市場の需給が引き締まってきており、また米国連邦準備制度理事会(F
RB)のイエレン議長が最大限の雇用の重要性を強調したが、近い将来の高インフレリスクはほとんどない。

インフレ抑制を維持できる保証はない

それでもなお、より長期的には、生産性の低成長の持続、高水準の債務、政府による格差削減を求める圧力などの逆境に直面した場合、インフレ抑制を維持できる保証は、どの中銀にもない。

インフレが休眠しているだけだと認識すれば、変動為替相場の国で債券が自国通貨で発行されるかぎり債務過多で恐れることなど何もない、という見方がばかげているとわかる。イタリアがリラのままだと、人々が債券の換金に殺到するおそれはずっと小さくなる。しかし、イタリアは依然として統治に大きな問題を抱えているので、インフレ率がブラジルやトルコのようになり、債務問題が物価上昇につながることは十分にありうる。

反インフレ政策は、物価安定と整合性のあるマクロ経済的、かつ政治的枠組みの中だけで奏功しうる。インフレが消滅していないのは確かだ。

週刊東洋経済2014年9月20日号

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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