一大産地が被害、どうなる"レタス価格" 全国の27%を生産する川上村で雹害

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つまり、雹が降った時期が、ダメージを大きくする原因となったのだ。農協でも、「雹はいつもならもっと早いうちに降るが、お盆を過ぎてからというのは異例で、しかも今年はもう3回目」(川上村農協販売課)と、苦渋の面持ちだ。

雹の害が、まだ生育していない早めの段階であれば、植え直したり、これからの生育に期待することもできる。しかしこのたびは二期作目の収穫間際であったのが痛手を大きくした。出荷不能となるか、一部のものについては穴や傷の部分を取り除いて出荷せざるを得ないため、商品価値が大幅に下がってしまった。本来の半額以下となることも珍しくないそうだ。レタスだけではない。丈夫な白菜でさえ、中心まで穴が空く被害を受けている。

さらに追い打ちをかけるように、9月になっても天候が回復せず、日照時間が十分に得られていない。雹が降った際、生育途中だったものについても、十分な成長が見込めないという。村でも、「農業で食べている村のため、農家の収入が下がると他の産業への影響が大きい」(川上村役場の井出さん)と心配している。

農協では、雹害に合った作物の出荷が済み、ある程度の被害額が計算できる9月末を待って、被害を受けた農家に「見舞金」の補助を行うという。

9月いっぱいレタスは高値

「年々異常気象という言葉が古くなるほど、不安定な気候の年が続くが、今夏は異常だった。全国各地で豪雨、長雨、雹害、日照不足、低温、高温など、異常気象が次々に襲った」(まつの・曽我さん)。

本来であれば生産地は全国に分散しているため、市場相場の高騰は一時的なことが多い。しかし全国規模の被害のため、高価格が続いている。農水省の見込みによると、レタスについては、例年を上回る価格が9月いっぱい続くとのことだ。消費者としてできることは、生産者に感謝しながら、無駄にせず、おいしく野菜を食べることぐらいだろうか。

ちなみに、川上村の人たちがよくする調理法が、しょうゆ、みりん、砂糖、にんにくのみじん切りを油でさっと熱して、そのままレタスにかけて食べる方法だという。カロテンやビタミンEなどの栄養素の吸収もよくなるほか、熱でかさが減るため、いっぺんにたくさんの量を食べられる。「簡単に作れてご飯のおかずにもなるので、おすすめです」(井出さん)。

(写真:「雹害を受けた畑」を除き、川上村役場提供)

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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