高いのは株だけ?景気は「よくない」 経済指標が示す、景気失速の証拠

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「友達とゴルフに行ったり飲み食いしたり、月に4万~5万円使うんだけど、給料が増えたからって妻が小遣いを増やしてくれる雰囲気はないね。そんな場合じゃないってさ」

働き手の収入は、額面で見れば増えている。安倍晋三首相は昨年、経団連をはじめとする経済3団体のトップに対して、異例の賃上げ要請をした。政府の強い“圧力”を受けた経営者たちは、重い腰を上げ、大手を中心に応じる企業が続出。7月の現金給与総額は36万9846円となり、前年同月を2.6%上回って、97年1月以来の高い伸び率を記録した。

それなのに、賃金アップの実感がないのは、モノの値段がそれ以上に上がっているからだ。消費者物価指数は4月、前年同月比3.2%増で、バブル期以来の高い伸び率を示した。その後も7月まで3%台の伸びが続く。その原因としては、4月に消費税率が引き上げられたこともあるが、安倍政権と日本銀行のもくろみ通りに円安が進み、輸入品の価格が上がっていることが大きい。

8月の新車販売 前年比9%減

実は厚生労働省の統計によると、実質的な賃金水準は、7月まで13カ月続けて前年同月を下回っている。これでは景気回復を引っ張る消費が盛り上がるはずもない。

「消費者の購買力が下がっているのは間違いない」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト)

という状況では、景気が冷え込むのは当たり前だ。

国内の新車販売は、消費増税前には「駆け込み購入」によって盛り上がったが、4、5月はその反動で前年比マイナスが続いた。ただ、6月にはプラスに転じ、安倍政権や経済専門家、大手メディアの間には、楽観論が広がった。ところが、7月はマイナス2.5%、8月に至ってはマイナス9.1%に落ち込んだ。

日本経済のエンジン役を担ってきた輸出と設備投資も盛り上がらない。

円安が進むと、外国製品に対する競争力が高まるから、輸出が増える──というのが、日本の輸出産業の“必勝パターン”だった。ところが、安倍政権になって円安傾向が続いているのに、貿易赤字が7月まで、かれこれ25カ月も続いている。

国内の設備投資の動きも鈍く、4~6月期の設備投資額の伸びは、前年同期比3%と低調だった。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、こう指摘する。

「多くの企業が海外生産拠点の拡充に主眼を置き、国内の生産設備の圧縮を続けている」

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