それでも、新法を作ること自体は評価できます。ただ、自民党の国会議員の女性比は9.8%。管理職の女性比はもちろん大事ですが、党の総裁なら、よその会社の話の前に、こちらの是正をすべきではないでしょうか。
男女共同参画を骨抜きにしかねない女性閣僚
さらに大きな問題は、その登用された5人の女性閣僚の顔ぶれです。山谷えり子氏、高市早苗氏、有村治子氏といった、自民党の中でも超保守的とされる人物が多数入っているのです。
山谷氏は2007年、教育再生会議で「親学に関する緊急提言」の概要をまとめた際、「子守歌を聞かせ、母乳で育児」「授乳中はテレビをつけない」といった非科学的な主張を盛り込み、自民党内からも批判が出て発表が見送られたことのある、保守的な家族観でたいへん有名な人。
高市氏は自分自身が別姓で政治活動をしているのに、選択的夫婦別姓制度導入には反対の立場。また機会の平等にとどめ、結果の平等を求めるべきではないとの立場を自身のウェブサイトでも公開しており、「二〇三〇」を暗に批判するものになっています。さらに同じサイトで、「○○家の跡取りを作らなくては、ご先祖様に申し訳ないと考えていた」とまで述べていました。
有村氏も「3歳児神話批判」(子どもが3歳になるまでは母親がそばにいるべきだ、という科学的根拠のない「神話」に対する批判)を疑問視したり、女性宮家に反対したり……。こんな方(有村氏)に「女性活躍担当大臣」になられると、成果を期待する以前の問題で、これまで積み重ねられてきた政策が後退しないことを祈るばかりです。
と思っていたら、案の定「(女性活躍推進には)現在の組織だけでは限りがある。新たな組織体制は必要だ」という、有村氏の発言が報道されました。男女共同参画局を拡充すればよいだけだと思うのですが。
ジェンダー論の専門家として正直に言わせてもらえば、この3人が「女性」という理由だけで入閣するくらいなら、自民党内にもいるもう少しリベラルな男性に閣内に入ってもらったほうが、ずっと安心できます。彼女らは、性役割分業規範や伝統的家族観を否定しないという意味で、基本的に「異質平等論」に近い人たち。男女共同参画行政が骨抜きにされないか不安です。
安倍さんの本気度を測る3つの指標
安倍氏が中身のない風船のように掲げる「女性の活躍」。その本気度を測るには、以下の3つの政策課題にどう対応するかが判断基準になると考えています。選択的夫婦別姓制度の導入、配偶者控除の廃止、年金の第3号被保険者制度の廃止です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら