トヨタ、メキシコ新工場が問う"章男流"の真価 成長への投資を求める現場と隔たり

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 9月16日、トヨタ自動車の豊田章男社長が新たな決断を迫られている。ワルシャワで4月撮影(2014年 ロイター/Kacper Pempel)

[名古屋/北京 16日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>の豊田章男社長が新たな決断を迫られている。大量リコール(回収・無償修理)などへの反省から、同社長は台数など規模拡大を追わず、トヨタ車の品質や魅力向上を最優先してきた。しかし、戦略的な工場新設にも慎重な「章男流」経営には、「今こそ投資再開を」と訴える現場との隔たりも見え始めた。

トヨタの新たな成長をどう実現するのか、章男氏の手腕が試されている。

既存の生産能力を洗い直せ

新工場は本当に必要なのか。今ある生産能力はぜんぶ使い切っているのか――。複数のトヨタ関係者によれば、章男社長はこの夏開かれた幹部会議で、メキシコでの新工場建設を主張する事業部に対し、その提案を突き返した。そして、10月までに北米などの既存工場で対応できないのかどうか、もう一度生産能力を洗い直すよう指示したという。

北米市場は新車需要が旺盛で、今後も人口増加が見込まれており、中長期的にも成長は確実とみられる。ピックアップトラック「タコマ」を生産するメキシコの既存工場(バハ・カリフォルニア州)も現在フル稼働で、12日には生産能力の引き上げ計画を発表。メキシコは関税を抑えられる自由貿易協定(FTA)を40カ国以上と結んでおり、輸出拠点としても魅力で、工場新設は今が絶好のタイミングと現場の意気込みは強い。しかし、章男社長は違う。

トヨタはリーマン・ショック前の急激な拡大により、2009年3月期は前期の最高益から一転し、約70年の歴史の中で過去最悪の赤字決算。09年には大量リコール、11年には東日本大震災による経営環境の激変に見舞われた。その教訓から、章男社長は「身の丈を越えない経営」に舵を切り、13年から3年間は原則、工場を新設しない方針を貫いている。社長には「その約束を反故(ほご)にしてまでも、メキシコでの生産能力を増強する時期なのか、という思いが強い」(トヨタ幹部)。

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