さすが!楽天のスタジアムは工夫がいっぱい 12球団のホームグラウンドへ行ってみた<2>

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視界方向の前列と左隣が女性という幸運には恵まれたものの、やはり良いことは2つない。とはいえ、フツーに投げて150㎞以上出る大谷のピッチングをナマで見ることができ、お立ち台に立つ、野手として活躍する聖澤諒の姿も拝めた(筆者は楽天のファンではないが、地味で守備と走塁がむちゃくちゃ上手い聖澤はまさに筆者のツボ)。

マー君の移籍金で注目される今期決算

最後に球団経営会社の財務にも触れておきたい。経営会社の㈱楽天野球団の2013年12月期の最終損益は4000万円の黒字。2013年12月末時点の総資産は112億円。内訳は流動資産が45億円で固定資産が72億円。おそらくこのあと契約更改で現預金を使うので、シーズンが開幕する3月頃には流動資産はいったん十数億円レベルまで落ちるのだろう。

特徴的なのは固定資産。楽天はプロ野球に参入する際、スタジアムの改修費用を負担したうえで、改修した資産を宮城県に寄付する見返りに、年間すべての営業権を得ている。このため、チケットやグッズ販売の収入のみならず、飲食や広告収入も全て球団に入る。

改修費相当を固定資産の営業権勘定に計上し、減価償却しており、なおかつ毎年スタジアムの改修を実施して座席数を増やしているため、未だに固定資産が72億円もある。EBITDA(減価償却前営業利益)ベースでは何年も前から黒字だという。

他球団は球場を所有していないので、資産は流動資産のみで12月決算だと40億~50億円、契約金支払い後に決算期末が来る3月決算だと十数億円というところが多い。他球団に減価償却費負担がないことからすると、実質的な“稼ぐ力”は広島東洋カープ以上かもしれない。

コストの最小化で利益を出す広島に対し、スポンサー収入を最大化させてトップラインを引き上げる楽天。まだ累損が3億6400万円あるが、マー君のポスティング移籍金が反映される今期は、一気に累損が解消し財務体質が大幅に好転する可能性が高い。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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