さて、オミクロンリスクは軽微に終わる可能性があり、パウエルリスクも規模はともかく、もともと予想されていた性質のリスクだ。また、チャイナリスクは起こらないかもしれないリスクだし、経済的な影響の評価は微妙だ。
なぜ「岸田リスク」はかなり深刻なのか
一方、最後に挙げる「岸田リスク」は、そのときの悪材料というだけではなく、向こう数年にわたって日本経済に悪影響を与える可能性がある「意外に深刻でありうるリスク」だ。
このリスクのシナリオの大筋は次のようなものだ。まず、夏に予定されている参議院選挙で岸田総裁の率いる自民党が大きく負けずに、政権の基盤が固まるとする。すると、岸田氏は自分のカラーを出しやすくなる。
もともと緊縮財政的なバイアスが感じられる岸田氏であり、さらに彼が安倍晋三元首相の経済政策を変えたがっていることは、「新しい資本主義」という、上滑りした中身のないキャッチフレーズに色濃く表れている。
また、インフレが日本の消費者物価にまで波及する可能性は十分あり、この場合、いわゆるアベノミクスの中核にあった金融緩和政策を岸田政権が変更しようとするに際して、理由を与える可能性が否定できない。
つまり、数年にわたったデフレ脱却への努力が無駄になる可能性がある。
さらに2023年3月には、日本銀行の正副総裁3人の任期が期限を迎える。2022年の年末頃には日銀人事の下馬評とともに、金融政策の転換が話題になる可能性がある。
日銀の人事は、それ自体が数年先の政策にまで影響する、強力な「フォワードガイダンス」であり、政策的メッセージだ。こうした重要な意思決定が岸田政権下で行われるとすると、これは株式市場にとって相当に大きな心配の種である。
資本市場だけでなく、実体経済に対して先々大きく影響する点で、筆者はこの岸田リスクが最も心配だ。生活全体に影を落としかねない、憂鬱なリスク要因なのだ。
なお、4つのリスクのいずれが実現した場合にあっても、株価は時々の情報と市場参加者の予想を織り込むだろうから、投資家は自分にとって適切な大きさのリスク資産を抱えて、じっとしていることが正解になりやすいはずだ。
われわれが乗っている飛行機は、2022年は乱気流のゾーンに入るかもしれないのだが、乗客にできることはシートベルトを締めて乱気流をやり過ごす程度のことにすぎない(本編はここで終了です。次ページは
競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください。
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